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引きずり込む深海聖堂 ダゴンちゃん戦記 それは、ありえない現象だった。 フィールドは1VS1。 敵は一体で、タイプは新型機であるテンタクルス型マリーセレス。 こちらは現行最強の火力と装甲を誇る戦車型ルムメルティアだ。 確かに言うまでも無く、索敵に優れた機種ではない。 だがそれは、ルムメルティアもそのオーナーも重々承知。 ヘッドユニットの発煙筒を肩に移植し、中身は高性能のセンサーに換装済みだ。 流石に火器型やヴァッフェシリーズには及ばないにせよ、今まで索敵に困ったことは無い。 そもそも彼女のスタイルは豪快な近接格闘を重視しつつも、センサーと大砲による遠距離精密砲撃もこなせるマルチアタッカーだ。 防御は分厚い装甲に一任し、リソース(能力)は大半を格闘戦に注ぎ込む。 遠距離では高性能なセンサーから得た情報で狙いの甘さを補いつつ、当たれば一撃と言い切れる3.5mm砲で一撃を警戒させ真に得意とする近接格闘の間合いへ誘い込む戦法を得意とする。 敵からしてみれば厄介だろう。 射撃に自信があっても、戦車型の装甲を貫ける火器は限られる。 数を撃って攻撃力を稼ごうにも敵からの射撃は一撃当たれば終わりで、こちらは何十発も打ち込まねばならない。 かと言って近接格闘に持ち込んでも腕力と装甲にモノを言わせた戦法に対処する方法が無い。 言ってみれば、格ゲで言う所のスーパーアーマー状態が常時だ。 しかも腕力は真鬼王以上。 さて、攻略法を。 と言われても大半のオーナーは困惑するだろう。 それこそ基本性能として、彼女の装甲を打ち抜ける火力が備わっていないとどうしようもない。 そして、彼女の装甲は重装甲で名高い戦車型のそれである。 神姫によってはどう戦っても勝ち目が無いのだ。 この戦法で彼女は中位ランクのトップクラスにまで上り詰めている。 あと数戦で上位ランクに達し、更に上を目指す。 その為に獲物を探していたが、既に彼女を知るオーナーが多くなり、対戦が滞り始めていた所だ。 だからこそ、あまりポイントにならない中位に上がったばかりの新型からの対戦を受け入れたのだが…。 「そもそも『見つからない』と言うのは、どういう事でありますか!!」 『―――』 宥めるマスターの声がするが、苛立ちは押さえられない。 冷静にならねばいけないと分っていても、感情はそう簡単に制御できないのだ。 なにしろ、そう。見つからないのだ。 戦闘開始から既に10分。戦闘時間の三分の一が経過している。 確かにフィールドは薄暗く、視界は全てに行き渡らない。 だが障害物の数は多くなく、たとえ光学迷彩を使用したとしても発煙筒で作り出した結界の中では無意味だ。 機体が存在する限り、それはどうしても煙を押しのける。 更には煙の成分は容赦なく装甲表面に付着し、その迷彩精度を奪い、隠れる事など許さなくなる。 仮にも上位に挑み、勝つつもりの神姫なのだ。 カメレオン如きに苦戦など論外。 搦め手など蹴散らして当然。 負けるとすればより強い神姫のみだ。 だが。 「見つからなければ勝てないのであります!!」 『―――』 「負けなければ良いと言う問題ではないのであります!! 格下相手に引き分けになればそれは敗北と大して変わらなく―――!!」 それだ!! 「それが狙いでありますか!? 引き分けてポイントを稼ごうと?」 天海のシステム上、勝った神姫は負けた神姫のポイントを奪う事が出来る。 要するに勝てばランクアップ。 負ければランクダウンと言う単純なシステムだ。 これは、上位の神姫に勝てば大きくポイントが動き、下位の神姫に勝っても変動は少ない。 下位の神姫にしてみれば、上位の神姫を相手に負けてもさして痛手ではなく、チャレンジが容易に出来る仕組みだ。 勿論上位の神姫が下位の神姫を相手に負ける事を想定するなどありえない。 上位の神姫が下位の神姫を相手にするのはハイリスク・ローリターンであるが、そもそも負ける要素が無いのだからリスクはゼロに近い。 これがランクの差が縮まればそうでもなくなるが、その場合にはリスクとリターンのローハイも極僅かだ。 だが、今回のように中位最高クラスの神姫と、中位最低クラスの神姫ならばその差は明白。 負ければ大打撃だし、引き分けでも大きくポイントが動く。 敵の狙いがその引き分けだとすれば、このような消極的な戦闘も頷ける。 つまり敵は最初から勝負をする気が―――。 べちゃ。 何か落ちてきた。 戦車型の頭の上に。 「むぐぅぅ、れありまふぅ!?」 出番が残り少ない事を察してか、こんな状況でも律儀にキャラ立ては忘れない戦車ちゃん。 そんな彼女の頭の上。 否。 頭を包み込むように鎮座したテンタクルス型神姫、マリーセレス。 「ふんぐー、であります!!」 力づくで引っぺがして地面に叩きつけるが、まるで応える様子も無いマリーセレス。 「ちゃーお」 なんて挨拶までしてくるが、戦場でその隙は命取りだ。 シングルアクションで素早く3.5mm砲を構えると、そのまま接射!! 「まだまだぁ!! であります!!」 砲身をパージし、3.5mm砲の基部にサブアームで用意しておいたパイルバンカーユニットを接続。 砲煙の中に突っ込んでそのままトリガー!! 「トドメでありますぅ!!」 最後はパイルバンカーも捨て去り、サブアームの手のひらを祈るように組んで頭上に振り上げる。 「どっせーい!! でありますよーっ!!」 一発一発が必殺に値する威力の3連コンボだ。 たとえガード状態の種型でもガードの上から削り殺す!! 「時間ばかりかかったでありますな」 ふぅふぅ、と息を荒げながら最初の砲煙が晴れるのを待つ。 と。 「奥歯から鼻の穴突っ込んで指ガタガタ言わせてやる~」 煙の中から突き出してくるRPGが二本。 「え?」 距離は至近。 回避が間に合うようなタイミングではなく。 そのまま吹き飛ばされる戦車型。 と、その脚をつかまれ強引に引き寄せられる。 「コイツまだ生きて…。え?」 「本日のお天気は晴天、所により武装神姫が降るでしょう」 発言もトンチンカンだが、それ以上に解せないのが敵の状態。 “あの”3連コンボを喰らったと言うのにほぼ無傷。 精々装甲表面に焦げ目が付いている位で、パーツの欠損どころか目立った損傷すらない。 「貴様、何者でありますか!?」 「あたし?」 くき、っと小首を傾げるテンタクルス型。 「ダゴンちゃん。……カタカナみっつでダゴンちゃん」 「そこは『通りすがりの武装神姫だ、覚えておけ!』って言う所であります!!」 「軍曹さんはよく分からないことを言う」 「じ、自分の階級まで知っているでありますか?」 得体の知れない新型に、最早勝ち目が無い事を悟る戦車型。 テンタクルス型の由来ともなっているスカート状の触手が、一本大きく振り上げられるのを見ても最早打つ手が無い。 触手の先には長戦斧。 「ゲッゲーロ」 「軍曹って、ケロロ軍曹かぁーーーーーーーーーーっ!!」 叫び終わるや否、振り下ろされた戦斧がその勝負に決着をつけた。 敗北した戦車型が、最新鋭即ち“起動したての神姫”が僅か数日で下位クラスを突破したと言う事実に気づくのはこの後だった。 ◆ さて、その十分後。 ◆ 「嘘つきぃ~~~っ!!」 「ちょ、泣かないでよ人聞きの悪い!!」 件のテンタクルス型神姫、ダゴンちゃんが、神姫センター内にあるショップのショーウィンドゥにへばりついていた。 それはもうべったりと。 テンタクルス型の触手の裏に増設された吸着機をフル活用し、ガラス面にペッタリ張り付いて、引き剥がそうとする少女に抗っている。 「買ってくれるって言ったのに、言ったのに~~~っ!!」 「そりゃ言ったけど!!」 以下、回想シーンである。 「ちょっと、ダゴンちゃん。ちゃんと戦いなさいよ。チャンスなのよ勝てば丸儲け、負けても大して痛くないし」 「今日はお日柄が悪く天中殺の日です。主にますたーが」 「あたしがかい!?」 「それに。こうやって天井にへばりついてるの、好きかもですし~」 「戦えっつーの!!」 「んじゃ~、勝ったらご褒美下さいな」 「戦乙女型の武装をフルでとか言われても無理よ。何万も出せないわ」 「500円位です」 「まぁ、それなら」 「1000円位かもでしたが~」 「1000円までなら出します。勝ちなさい」 「頭の中でこーふん剤の特売ですぅ!!」 喜色満面、真下の戦車型に向かって落ちてゆくダゴンちゃん。 「いつの間に移動してたのよ?」 「会話中に動くなと言われなかったのか!! 動くのは神姫で、動かないのは良い神姫だ~ぁ」 「あー、ホントなんでこんなキチガイ神姫になっちゃたのかしら」 以上、回想終了。 「これ650円です~。1000円以下です~。お前のかーちゃんより安いです~ぅ!!」 「あたしもね、服やら武器やら防具ならやぶさかじゃないわよ。むしろ今日は頑張ったし漱石さん2人位ならお別れできる気分よ」 「やたっ!! 3個も買えるですか!?」 「“これ”は買わない」 「なんで~」 「あんたが買おうとしているのが『首輪』だからよ!!」 非常にSMチックなデザインで、ご丁寧に鎖まで付いている。 「これをつけてご主人様こんなの恥ずかしい、って皆の前で言うのがついさっきからの夢だったのに~ぃ!!」 「捨てちまえ、そんな夢!!」 「それじゃぁあっちのボンテージでも良いですよ」 「あっちはもっとエロいでしょうが!! ……って嘘!? こんなのが1万もするの!?」 「その謎を解明するのだぁ」 「しない、って言うかお金無い」 「お財布の隠しポッケに困った時の諭吉さんが」 「なんで知ってるのよ、アンタ!?」 「お金大好き」 「人間はみんなアンタ以上にお金が好きよ!!」 「齧るの?」 「齧らんわい!!」 「しゃぶる?」 「しゃぶらん!!」 「舐める?」 「舐めんな!!」 「犯す?」 「おk―――、花も恥らうJCにナニ言わすんじゃこのエロ神姫!!」 「せっくす」 「言うかぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「性別って英語」 「知ってるわよそんぐらい、脱ゆとり世代舐めんな!!」 「りぴーとあふたーみぃ“せっくす”」 「言えるかアホぉ!!」 「せっくす、せっくす!!」 「言わないわよ」 「せっくす、せっくす!!」 「……黙秘権を行使します」 「せっくす、せっくす!!」 そろそろ周囲がザワついて来た。 「せっくす、せっくす!!」 「だぁー、もう!! せっくすせっくす連呼すんな恥ずかしいでしょうが!!」 「ぱぁ~っ」(満足げ) 「あ!!」 かなりの大声で叫んでしまった。 「えっと、その」 周囲の視線が刺さる刺さる。 「違うんですよ。ほら」 あんな若い内からやーねー的な白い目の包囲網。 「これにはその、深い事情が」 メール打ってるやつ複数確認。 「逃げるわよダゴンちゃん!!」 「やだ」 逃走に移ろうとした手を引っ張るテンタクルス。 その触手はいまだベッタリとガラスケースに密着中だ。 「買ってくれたら離れてあげます」 「あんたは~」 「せっくす、せっくす」 「分ったわよ、買う。買います。買うから黙っててぇ!!」 こうしてダゴンちゃんは戦車型のみならず己がマスターにすら打ち勝ったのである。 対戦成績 引き摺りこむ深海聖堂:ダゴンちゃん。 VS戦車型:あっしょー。特に記載する事もない10分間。実質1分でケリついたし。 VS貴宮湊:しんしょー。流石にますたー超強敵。エロスに耐性があったらやばかった。 ダゴンちゃん戦記・姦!! 「字間違った」 ダゴンちゃん戦記・完!! テンタクルス型発売記念SS。 続くかどうかは未定。 しかしマリーセレス以上にラプティアスとアーティルの完成度が異常。 テンタクルス型も充分以上に楽しんですがね。 鷲&山猫はSS書きたいですが書くとアスカ以上の長編になりそう。 マリーセレス買った勢いでSS書いたALCでした。 -
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『"NOTRE-DAME" MARIE DE LA LUNE vs "ZYRDARYA" LALE SAITO』 仮想バトルフィールド上空に、文字が映し出された。 そしてその文字の横に数字が現れてバトルの開始時間をカウントダウンし始める。 「えっと、とりあえず、何したらいいのかな?」 私は目の前のクレードルで眠るマリーに聞いた。彼女の意識は今、筐体の中の電脳空間にいるのだけど、不思議なことに返事は現実の、クレードルの中のマリーから帰ってくる。 「まずはウォードレスを展開させてくださいませ。そうすればあとは私が美しく戦ってみせますわ」 「そっか。頑張ってね、マリー」 「はいっ」 マリーは目を閉じたままにっこりと笑った。 カウントダウンは最後の十秒を切る。電子音と一緒に数字はどんどん小さくなっていった。 開始三秒前、上空の文字は『READY』に変わる。 「いきますわ、のどか様」 私は軽く頷く。そして数字はゼロを示した。 「マリー、ウォードレス展開!」 そう言うと、マリーのドレスの裾のディティールが伸びて、前面ののこぎりのような形をした二本が、自由に動くライトセーバーのように、その他は小さな砲身を現して追撃用の機関砲になった。マリーはかなり可愛いものを選んだと思っていたけど、実際に展開したものを見ると意外とかっこいいものだ。 同時に相手は右手のポーレンホーミングを放つ。ハンドガンだというのにその弾は弧を描いて一つ一つがマリーを追う。その間にラーレはマリーとの間合いを詰めた。 マリーは飛びながらポーレンホーミングの弾を避けようとした。けれども高い誘導性能を誇るその弾は進行方向を百八十度変えてなおマリーを追った。そこへ猛スピードで間合いを詰めながら剣を構えるラーレがマリーの視界に入る。 「速いですわ」 関心しつつもマリーはウォードレスの機関砲をホーミングの弾へと向けて放った。そして両手で傘を持ち、ラーレの剣を受け止める構えを取った。 機関砲から発せられた弾幕は見事にポーレンホーミングを全て打ち落とし、とりあえずマリーは背後からの脅威から解放された。しかし次の瞬間、甲高い金属音と共にマリーとラーレは初めてお互いを至近距離で認識し合う。 「いいドレスですね」 鍔迫り合いをしながらラーレが言う。 「ありがとうございます。あなたのその銃も面白いですわ」 マリーがそう言い返すとラーレは不敵に笑った。 ††† カトー模型店の扉が開き、男が一人、入る。 「こんにちは、カトーさん。なんか盛り上がってますね」 「やあ、時裕君。今ね、のどかちゃんが戦ってるんだよ」 「あいつが?へえ、相手は?」 「斎藤香子ちゃん」 「...うちの妹に嫌がらせですか」 「いやいや、丁度女の子同士でいいと思って」 「のどかに香子ちゃんは倒せないでしょう。だって彼女は」 「それが結構頑張ってるんだよ、のどかちゃん」 「まだ香子ちゃんが手加減してるんじゃないですか?」 「そうだね...まだ"チューリップ"を使ってないところを見ると...」 「この店のオリジナルウェポンをあそこまで使いこなせるのは彼女だけですよ」 「うれしいことだねえ」 「ああ、哀れかな我が妹よ」 「君は本当にのどかちゃんのことが好きなんだな」 「そりゃあもう。アーニャの次に」 二人の男は再び視線を筐体に戻す。 ††† 数回、斬りあった後、ラーレはうしろに退いて、広めの間合いをとった。そしてまたポーレンホーミングを打つと、今度は腰から先にチューリップを模した飾りをつけた棒を取り出す。マリーは打撃系、もしくは投擲系の武装だと思って、傘をソードモードからライフルモードに構え直した。先のような急速接近で瞬時に懐まで迫らせないようにするためだ。 ポーレンホーミングから放たれた高誘導弾は例のごとくマリーのドレスに打ち落とされる。恐らくラーレはポーレンホーミングを決定力のある装備ではなく、間合いを取ったり、対戦相手を自分の思う場所に誘導するための補助的な装備であると考えているだろう。 手に持った棒を、ラーレは器用に片手でクルクルと回す。ジルダリアのスレンダーな体型も味方して、その姿はバトン競技のトッププロのようだ。 「今日が初めてのバトルのあなたに、こんな仕打ちはひどいかもしれませんが...マスターの記録を更新するために、全力で勝たせていただきます」 「光栄ですわ」 そう言ってラーレは回すのを止めた。そしてユピテルが雷を放つように、その棒をマリーに向かって投げた。 「ジャベリンですわね」 マリーは当然のようにそれを避けようとしたが、その前に飛んでいる棒の先のチューリップが開き、そこからさらに何かが発せられる。霧のようなそれは僅かにマリーの足に付着した。 乾いた音をたてて棒は着地した。その様子を見届けてラーレはまた手に剣を握る。 「さっきのは一体なんなんですの?」 「すぐにわかります」 二体の神姫は再び剣による近接格闘戦を始めた。マリーは傘で攻撃しつつも、ドレスで細かく間合いを取り、ラーレも主となる攻撃は剣であるものの、ポーレンホーミングを巧く使い見事に隙を埋める。単純な斬り合いのように見えるが、実際は双方が一瞬の隙を伺い合う頭脳戦であった。 しかしそれがしばらく続いたあと、マリーは異変に気づいた。足の動きがだんだんと鈍くなっていったのだ。sそれもさっきの霧のようなものが付着したあたりから。 「これは...?」 「効いてきたようですね。あの杖――トライアンフは麻痺性の液体を高圧噴射するものです。こっちのフレグランスキラーと違ってあの杖は遅効性。ゆっくりと、気づかないうちに機能を停止させるのです」 ラーレが説明する間も、非常に遅いスピードで、しかし確実にマリーの足は動きを遅くしていった。 『マリー!大丈夫!?』 「大丈夫ですから、のどか様は今と同じ指令を続けてください」 『左だよっ、マリー!』 気がつかないうちに、気づけない間にラーレが放った最後のポーレンホーミングの弾がすぐそこまでマリーに迫る。咄嗟にドレスの機関砲を向けたが、間に合わなかった。七発中の二発がマリーに直撃し、マリーの体が飛ぶ。胸元の赤いリボン状のディティールが煤けた。 「んっ...」 初めてマリーが苦痛の声を上げた。 『ねえ、もう止めようよ!もう少し強い装備にしてからまたやればいいからっ!』 「それは...ダメですわ...」 『マリー...』 「わたくしは人形型武装神姫。この姿で勝てるようにならなければ意味がないのですわ!」 マリーは再び立ち上がった。足はすでにただ体重を支えるだけの棒となっていたがなんとかバランスをとって傘を構える。 「...次が最後ですね」 ラーレが言う。彼女もまた剣を構えた。 その数秒後、ラーレが風を斬る。 ――ほんの刹那の後、ラーレの剣の切っ先はマリーの首筋に迫っていた。 ††† 「えっ?神姫バトルを始めてからずっと無敗だった!?」 香子ちゃんは静かに頷いて、彼女の肌理細やかで白い頬がうっすらと桃色に染まる。私はそんな仰天事実に開いた口が塞がらなかった。 「カトーさんの勧めで始めたんですけど...」 「そう。一戦目からずっと負けなし、四十七戦連勝。この店のオリジナルウェポン"チューリップ"を使いこなす戦い方は毒を持つ可憐な花そのもの。いつしか『プリンセス・オブ・ワイトドリーム』の通り名で呼ばれるようになった俺たちのアイドルだ!」 私と香子ちゃんはその声の主のほうへ顔を向けた。いや、私はその声が誰のものかわかっていたのだけれど、あまりのバカっぷりに向きたくなくても向いてしまったのだ。まわりで同調してる男の子たちもちょっとアレな感じだけど、こんなバカなことを堂々と言えるのはお兄ちゃんだけだろう。 「いつからいたの?」 「お前が負けそうになってたころから」 お兄ちゃんの肩に乗ったアーニャがお辞儀をした。 「あ、あの...のどかさんと時裕さんってお知り合いなんですか?」 香子ちゃんは私とお兄ちゃんの顔を交互に見て言う。その様子が少しおどおどとしていて、私は不思議に思った。 「うん、知り合い、兄妹。ていうか、香子ちゃんがお兄ちゃんの名前知ってるほうがびっくりだよ」 「そりゃお前、俺は香子ちゃんファンクラブ(ナイツ・オブ・ワイトドリーム)の会員ナンバー一番だからな。当然だろ」 「よかった...」 『よかった』...?えーと、この何気ない彼女の言葉からとてつもなく危険な香りがする。 それだけはダメな気がする。なんというか、香子ちゃんの将来的に。 とりあえずお兄ちゃんのほうに警告しておこう。 「ダメだよっ!妹と同級生の娘に手を出すなんて、大人として!」 私はお兄ちゃんの耳元で小さく言った。お兄ちゃんは何のことだ、という顔をしたのでそれ以上は何も言わなかった。 「しかし、俺は悲しいぞ、妹よ。そんな我らのアイドルをあんなふうに倒してしまうなんて。お前は香子ちゃんが可哀想だと思わんのか」 「いえ、負けは負けですし、私も調子に乗ってたんです。それにマリーさんはとっても強かったです」 香子ちゃんの制服のポケットからラーレが顔を出してそう言った。 ††† ――確かにラーレの剣の切っ先はマリーの喉に迫ろうとしていた。 しかしそれはあくまで迫ろうとしていたのである。 数ミリ手元を動かせば切っ先は間違いなく突き刺さる位置ではあったが、ラーレはそれ以上動けなかった。彼女の腹にはマリーの傘の先がピッタリと、一ミリの隙間もなく触れて、さらに両脇を、二本のクワガタの角のようなウォードレスの武装が挟み込んでいたからだった。 「少し、手元がブレましたわね」 マリーが言った。 ††† 「人形は少しも狂いのない精密な造りであって初めて、価値があるのですわ」 マリーが私の頭の上をふわふわと浮きながら得意気にそう答えた。 「うむ、素晴らしい。それでこそ人形型武装神姫ノートルダムだな」 「細かい設定と調整はみんなお兄ちゃんでしょ」 「だから素晴らしいって言ったんだ」 私は深くため息を吐いた。お兄ちゃんの無駄に自信満々な言葉に呆れたのもあるけれど、それをキラキラと輝く目で見つめる香子ちゃんにもちょっと呆れたからだ。 「さて、のどかちゃん、マリーちゃん。どうだった初めてのバトル、しかも勝利の味は?」 カトーさんが私たちにそう尋ねた。 私はマリーの顔を覗く。彼女もまた私のほうに顔を向けた。 「楽しかったですわ」 「そうだね、楽しかった」 それはよかった、とカトーさんは笑った。 「香子ちゃん、今度またバトルしようね」 「ええ。次は負けませんよ」 作品トップ | 前半
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「相手を寄り付かせないで倒すパルカで」 「…お兄ちゃん。ありがとう、嬉しいです!」 左肩で、頬を桃色に染めながら喜ぶパルカ。 まぁ喜んでくれるのは嬉しい。 だけど他の三人は少し残念そうな感じだ。 『後で他の奴等と戦うから、その時にな』と言うとパア~と明る表情になる神姫達。 さて、そろそろ対戦するか。 装備…よし! 指示…よし! ステータス…よし! パルカを筐体の中に入れ、残りの神姫達は俺の両肩で座ってパルカの観戦をする。 「パルカ、頑張れよ!」 「うん!お兄ちゃん、私頑張るから!」 「相手を接近させないように弾幕を張るのよ!」 「一番最初のバトルであたしの妹なんだから!姉のボクを恥じかかせるなよ!!」 「負けそうになったらパルカの巨乳で相手を翻弄させるのもアリよ~!」 「ルーナさん…さすがにそれはちょっと…」 パルカは少し心配そうにしていたが、頑張なりな笑顔を俺に見せ筐体の中へと入って行く。 気がつくと俺は両手で握り拳をつくっていた。 いつになく俺の心は興奮していたのだ。 何故だろう? 多分、誰かを応援している事によって熱くなっているのかもしれない。 それとパルカに勝ってほしい、という気持ちがある…かもなぁ。 俺は筐体の方に目を移すと中には空中を飛んでいる二人の武装神姫達が居た。 READY? 女性の電気信号がの声が鳴り響き、一気に筐体内の中が緊張が走る。 勿論、外に居る俺達もだ。 FIGHT! 闘いの幕があがった。 お互いの距離150メートルからスタートして、敵のストラーフが接近しパルカは後方に後退する。 敵のストラーフが総重量的に重いせいか、二人に間の差がひらく。 距離250メートルぐらいの間合いかな。 「お願い!当たって!!」 パルカは“ヘルゲート”アサルトブラスターを取り出しババババ、と連射する…が。 「へっへ~んだ。そんなじゃ当たらないよ~だ」 余裕綽々で避ける敵のストラーフ。 回避した後はすぐさま間合いを詰めパルカに近づく。 「ッ!?これなら!」 すぐさま“ヘルゲート”アサルトブラスターをしまうと“ピースビルダー”リボルバーを二丁取り出した。 二丁拳銃か!? パンパン! 「ヒョイ、ヒョイ、と。楽勝ー」 慌てて撃ったためかパルカの攻撃はミスした。 クッ! このままではマズイ! そう思った瞬間。 間合いの距離は50メートルぐらいになっていた。 「クラエー!」 「!?」 敵のストラーフはDTリアユニットplusGA4アームのチーグルで攻撃しようとした。 「間に合って!」 “ヘルゲート”アサルトブラスターを再び取り出し自分に迫ってきてるチーグルに縦に向けた。 ガキャン! 筐体の街の中でとても鈍い音が響いた。 何故そんな音がしたのか。 それは“ヘルゲート”アサルトブラスターを盾にして、間一髪の所でチーグルの攻撃から逃れたのだ。 しかし、“ヘルゲート”アサルトブラスターを盾にしたおかげで、もう銃としての機能は失われていた。 あんなボロボロじゃあ撃てないだろう、DTリアユニットplusGA4アームのチーグルでの攻撃は破壊力抜群という訳か。 パルカは間合いを詰められてしまったので後方に下がる。 しかし、敵のストラーフはそれを許さない。 アングルブレードを取り出しパルカに再び攻撃しようとしたのだ。 「ッ!」 「避けるなよ~」 ギリギリの所でかわす事が出来たパルカは更に間合いを広くしビルの背後に隠れてしまった。 「…お兄ちゃん。助けて、お兄ちゃん…怖いよー…」 ビルの背後で声を殺しながら無くパルカ。 しかも俺に助けてを求めている。 畜生! 助けてヤりたい所だが俺にはどうする事も出来ない。 …いや、まだ助けてあげる事は出来る。 けどその方法は…負けを意味をする『降参』だ。 どうする、俺。 私的には勝ってほしい。 だが、これ以上パルカが傷つくのをただひたすら眺めるのは嫌だ。 「パルカ、聞こえるか?」 「お、お兄ちゃん!」 俺の声に気づくとパルカの目から更に涙が流れる。 可哀想に…よっぽど怖かったのだろう。 「今すぐ降参の意思を相手に示すから待ってろ」 「えっ!?なんで降参するの!」 「そうすればお前が怖がる必要は無くなるからだ。無理にバトッたってしょうがないだろうが」 「お兄ちゃん…」 「それにお前が泣いて苦しんでいる、姿なんか見たくないんだよ」 「………」 「ナッ。だからパルカはそこで待っ」 「お兄ちゃんは私に『頑張れよ』を言ってくれました」 俺の言葉を途中で遮ったパルカは俯きながら次々に口を開く。 「あの時、私は『あぁ、お兄ちゃんに期待されてる。頑張らなくっちゃ!』と思いました。…だから今が頑張る時です!」 バッ、と俯いた顔を俺に見せたパルカの顔は涙目でもキリッとした顔をしていた。 今までオドオドしていたパルカを見てきたが、ここまでシッカリとしたパルカは初めて見た。 フッ、パルカがそう言うなら俺は何も言うまい。 「なら、頑張って行ってこい!パルカ!!」 「はい!お兄ちゃん!!」 ビルの背後に隠れのをヤメて敵のストラーフに自分の姿を現す。 すると敵のストラーフがニヤついた顔で。 「アンタのオーナーも貧弱ね。さっきまで降参するかしないか悩んでいたよ。でもそう考えるのも無理もない話。貴女、弱いし」 「お兄ちゃんの悪口を言わないで!」 ブオン! 「ヘッ…ちょっとー!?!?」 パルカが敵のストラーフに投げつけたのはモアイ像だった。 モアイ像は固形燃料ロケットおよび整流装置およびアクティブセンサーが内蔵されておるので殆どミサイル状態。 つか、ミサイルと変わらない。 でも命中率が-125なので敵のストラーフに避けれてしまった。 「ちょっとアンタ!危ないじゃ、キャーーーー!?!?」 「えいえいえいえーーーーい!!!!」 次々と敵のストラーフにモアイ像を投げつけるパルカ。 実はパルカの頼みで出来るだけ武器のモアイ像を装備させていたが…これは中々シュールな光景だ。 だって沢山のモアイ像が敵のストラーフに向かって飛んで行くのだから。 ていうか、パルカが投げすぎて近辺はそこらじゅうモアイ像だらけだ。 外れたモアイ像はビルを破壊したり道路を破壊しながら落ちてぶつかっていく。 …ホント、シュールな光景だ。 あ、モアイ像で思いだしたんだけど。 このデザインのモアイ像。 コ○ミ株式会社のゲーム、『GRADIUS』に出てくるあれだろう。 特に指摘するのなら、PS2のGRADIUSⅢで出てきて、宇宙の中でクルクルと回転しながら口から子モアイ像を吐き出して攻撃するアレ。 因みにあのシューティングゲームは大好きだ。ファミリーコンピュータからPSPまで持ってるぞ。 ってそれは置いといて…しかし、モアイ像の何処を気にいったのだろうか、パルカの奴は。 後で聞いてみるか。 「これで、最後よーーーー!!!!」 「イヤーーーーこれ以上は止めてー!!!!」 ありゃりゃ。 敵のストラーフは戦意喪失してしまったようだ。 それもそうだ。 なんたってモアイ像が飛んでくるのだから。 ん? 筐体の俺の方についてるコンソールを見ると相手からの通信が出ていた。 ん、と何々…。 俺はコンソールを見るとそこには『降参』の文字が浮かび上がっていた。 それはこちらの『勝利』を宣言する言葉。 すぐさま俺はパルカにこの事を告げようとした。 「パルカ、戦闘中止だ!相手のオーナーが降参したんだ!!」 「…え?それは本当ですか??」 最後のモアイ像を投げつけようとしていた動作を途中で止め、俺見ながらキョトンするパルカ。 「ああぁ。本当だ、俺達の勝ちだ」 「や、やったー!勝ったんですね、私!!」 筐体の中で俺の事を見ながら喜ぶパルカ。 俺も自分の神姫が勝った事が嬉しくて微笑む。 両肩にいるアンジェラス達も喜びはしゃいでいる。 そうか…。 これが武装神姫の楽しみ方か。 確かにこれは楽しい。 おっと、パルカを筐体から出さないといけないなぁ。 筐体の出入り口に右手を近づけると勢いよくパルカが飛び出して来て俺の右手に抱きつく。 そのまま俺は右手を自分の目線と同じぐらい高さまで持っていきパルカを見る。 「よく頑張ったな、パルカ」 「はい!私、お兄ちゃんの言葉が励ましになって頑張る事が出来ました!!」 「そうか。そいつはよかったな。これはご褒美だ」 「あ、あうぅ~」 俺の右手の手の平に乗ってるパルカの頭を左手の人差し指の腹の部分で撫でる。 撫でているとパルカが俺の指を掴み自分の胸にそっと押さえるつける。 うわっ、パルカの巨乳が…物凄く柔らかい。 「あの、お兄ちゃん。頭を撫でるより、私の胸を触ってください」 「なんでまたどうして?」 「そっちのが気持ちいいからです。ご褒美なら…いいでしょ?お兄ちゃん」 「う~ん、まぁいいよ。お前がそれで良いと言うなら」 「お兄ちゃん、ありがとう」 プニプニとパルカの胸を触ると押した方向に乳房が歪みエロスをかもし出す。 ウハッ、気持ち良過ぎだぜ。 つーかぁ、まるで俺がご褒美をもらっているような感じなんだけど。 「いいなぁ…。ご主人様、ご主人様、次の試合は私を指名してください。絶対勝ちますから!」 「あー!いいなぁ~パルカの奴~。よし!!次のバトルはボクが出る!!!」 「ダーリンのご褒美を貰うために頑張らないといけませんわね」 両肩で何やらパルカに嫉妬しているように見える三人の神姫達。 そんなにご褒美が欲しいのか? まぁ今日はトーブン、ここにいるつもりだから一応全員バトルさせてやるか。 すぐさま指を胸から離すとパルカが少し不満そうな顔しながら。 「え、お兄ちゃん。もうご褒美お終いですか」 「まぁね。解ってくれや」 「む~、分かりました。でも次にご褒美くれる時はもっと触ってくださいね」 「…善処します」 ちょっと疲れた。 体力が、というよりも精神的に…。 まぁいいか…、パルカが気持ち良くなるのなら俺はなにも文句は言わん それに胸を触った時のパルカはエロかったし。 また胸を触りたくなるような表情だった。 ここでまた再びパルカの巨乳を触ったりすると乗っている三人に何されるか解らないのでお触りはお預け。 パルカを右手から左肩に移動させ、俺は次の筐体に向かった。 闘いはまだ始まったばかりだ。 「さぁ行くぞ!俺達のバトルロンドの幕開けだー!!」 こうして俺達のバトルロンドがスタートした。 そしてこの日からパルカの二つ名が出来た。 名は『銀を操る者』…。
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鋼の心 ~Eisen Herz~ 「犬子さんの土下座ライフ」特別編 -遠征編- ※土下座さま/著 ネタバレ解禁につきあとがき差し替え。 「ここが天海神姫センターですか」 「はい、リアルバトルオンリーの容赦なき戦場で、ツワモノどもが切磋琢磨する修羅の国です」 「うーん、確かに様々な上級者の方の胸を借りることは出来そうですが……正直不安ですねぇ」 「大丈夫ですよ! 私はLPの豊富さには定評のあるハウリンタイプで、しかも今までの戦績は全戦全損敗北なためその成長もハンパなく、打たれ強さには自信がありますから!」 「冷静になると、あまり威張れた話ではありませんねぇ」 「うう、お恥ずかしい限りです……ですが! 今日ここで修練を積むことで、きっと明日は新しい自分に変わっていけるものと信じています!」 「そうですか……でしたら僕はもう何も言いません。全力でサポートしますから、頑張って来てください!」 「はい!」 「ネメシスだー! ネメシスが出たぞー!」 「マジかー!」 「ジーザス!」 「ま、待ってくれ! 中に、中にまだ俺の種子が……!」 「もう手遅れだ、諦めろ!」 「そ、そんな……種子、種子ぉぉぉぉぉ!」 「こっちには化け猫が出たぞー!」 「オーマイガッ!」 「俺、このバトル終わったら猫子にコタツクレイドル買ってやるって約束してたんだ……」 「くそう、やってやる、やってやるぞ!」 「すまない兎子……! 勝ってこいなんて言って、俺が悪かった! 俺が悪かったから…… どうか無事に、無事に戻ってきてくれ、たのむ……!」 「曲射が、曲射がどんなに逃げても追いかけてきて……物影に隠れても平気で狙ってきて…… いやあああああああああああああ!!」 「落ち着くんだ鳥子! もうバトルは終わったんだ、終わったんだ!」 「マスター、そっち大丈夫? トラップない? トラップないよね? あ! 今私の後ろでトラップ仕掛けられたかも?! マスターはそっち見ててね?! 絶対だよ?! 絶対目を離しちゃダメだからね? 目を話したらその隙にトラップで囲まれるんだから……!」 「いやだから黒子、バトルはもう終わっってるって」 「こっち向いちゃダメー!! トラップしかけられちゃったよ、囲まれた、囲まれちゃったよどーすんのよマスター?!」 「くそ、今日はなんて日だ……!」 「おい! こっちじゃポン刀持ったアーンヴァルとやたら素早いサイフォスが狩り物競争してるぞ?!」 「……中の奴らの冥福を祈ろう」 「勝手に殺すな?!」 『No3エリアの戦闘が終了しました』 「丑子! 大丈夫か丑子?!」 「ま、ますたぁ……わたし、ますたぁの武装神姫になれて……幸せでした……がくっ」 「丑子ーーーーーーーーーーーー!!」 「あれ……? なにも見えないよ……何も聞こえないよ……マスター、どこですか、マスター……?」 「ここだ……俺はここにいるぞ……よく頑張ったな、もういい、もういいんだ、ゆっくり休むんだ……」 「ご主人様ー……パインサラダ作る約束、守れなくてごめんなさい……」 「そんなこと気にするな! そんなものいつでもまた作れるじゃないか!」 『予約ナンバー121~132の方は、対戦スペースへお入りください』 「いやああああああああああ!! もういやあああああああああああ!!」 「いかせない、いかせないぞ俺の騎士子は?!」 「あ、俺いま急用ができたわ。帰ろっと」 「ふ、震えてなんていませんよ? これは武者震いですったら」 「あ、マスターなんか前の人が次々帰っていきますよー♪ 得しちゃいましたね♪」 「バカ! 俺たちも帰るぞ!」 「…………………………」 「…………………………」 「……帰りましょうか?」 「はい♪」 遠征編――完! 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る 犬子さんの土下座ライフ。へ進む はい。と言う訳でネタバレのお時間です♪ ALCの作と見せつつ、実は土下座さまの作品だったりする本作。 果たして何割ほどのマスターさんが気づかれたのでしょうか? まあ、文体がぜんぜん違うのでもろばれだったような気もいたしますが…。 ALCに暖かなイメージのSSは無理だ(泣)。 かねてよりの告知どおり、一週間ほど経ったので驚愕の事実を公表するにいたった訳であります。 ご意見、ご感想、愛の告白、その他諸々…。 土下座さまへどうぞ。 ちなみにALCはあとがきを書いただけで御座います。 何にもしてない楽ちん楽ちん。 おまけに本文の修正まで土下座さまにやって頂いたとあっては…。 さて、どんな恩返しをいたしましょうかね?
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とにかく、新作を出してほしいな・・・ -- (名無しさん) 2015-07-08 00 06 54 コンマイは全てのユーザーを敵に回した以上、次回作を望むのは無理と見るべし。 -- (名無しさん) 2015-07-08 17 41 41 全てのユーザーってなんかあったっけ? -- (名無しさん) 2015-10-12 00 03 50 武装神姫のゲームによるブーム復活、 その先駆けとして、バトマス最新作が出たら、買う。 -- (名無しさん) 2016-01-26 17 02 52 仮にリメイク版が出るなら最初から黒子を使わせてほしい…あんばるが最初からいるのに対がF2後って… -- (名無しさん) 2016-03-25 16 08 41
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「・・・・ねぇ、彩女」 「なんですかアメティスタ・・・よいしょっと」 「・・・・二人っきりだね」 「そうですね・・・・っと」 「バトルなんかやめてさ、二人でどっかいこうよ。ほらあそこ、ホテルあるよ」 「そうですか・・・・・・・よっと」 「・・・・・・・・おっぱい揉んでいい?」 「駄目です」 * ホワイトファング・ハウリングソウル * 第十三話 * 『黒衣の死神』 『都市ステージ』を、彩女とアメティスタは歩いていた。 ・・・いや、正確には歩いているのは彩女だけである。アメティスタは歩いていない。 ならば彼女はどうしているのか。 彩女におぶさっているのである。 「・・・いくらなんでもですね。・・・・よっと、こういう時くらい二本足にしたらどうですか・・・・っと」 「ヤだ。だってこのヒレはボクのトレードマークだよ? アイデンティティなんだよ? それに二本足にするには声を魔女にあげないといけないし」 そういうアメティスタの足は今もイーアネイラの装備であるティティスだった。これでは陸上で歩けないため彩女が背負って水場まで運んでいる。 「そもそも水中戦でもないのにイーアネイラ装備なのがおかしいんです。・・・っと。エウクランテだって水中専用じゃないんですよ。・・・よいしょ」 「知ってるけどさ。でもこれは外せないね。ある意味ボクの決意の証みたいなもんだし」 「だからって・・・っと。今襲われたらどうするつもりですか・・・っしょっと」 「大丈夫だよ。ボクらが敵に遭遇するのはピッタリ五分後、彩女がボクを公園の池に運び終わるのが今から二分後。三分の余裕があるよ」 「・・・便利ですね予知能力・・・・っと」 そう、今彩女とアメティスタは公園を目指している。 アメティスタが入れて戦えるような場所がそこしかなかったからだ。 ・・・余談だが戦闘用に武装をしたアメティスタは結構重い。今こうしている間にも、彩女の体力は削られ続けているのだ。 「便利とはいっても、このバトルの結果は見ないようにしてるよ。だってつまらないじゃん」 「それもそうですね・・・・よいしょっと」 彩女は掛け声と共にアメティスタを背負いなおす。 公園はもう少しだった。 「・・・・うん。ヴァーチャルとは言えやっぱり水に浸からないとね」 無事公園に着き池に入ったアメティスタはそういいながら水をすくった。 彩女はとっくの昔に公園を出て、敵を探している。 あと一分もすれば天使型の一撃を食らうだろう・・・・どうなるかはあえて予知しなかった。その方が面白いからだ。 「~♪」 彼女は鼻歌を歌いながらプチマシィーンズに指示を出す。その数凡そ十三。 公園中に散ったプチたちはそれぞれのポジションにつき、情報を送ってきた。 「・・・・ふぅん。西から来たか。とりあえず公園に入ったから・・・結界をはるか。あとはボクの闘いだね」 アメティスタがそういうと同時に、公園内に霧が立ち込める。 なんてことはないただの霧だ。 「・・・煙幕のつもりかしら?」 と、その霧の中、アメティスタのものではない声が響く。 声のしたほうへとアメティスタは顔を向け・・・一瞬その顔が強張る。 「煙幕じゃないんだけどね。・・・まぁ、似たようなもんかな? 始めまして、ボクはアメティスタ。キミは?」 「わたしの名前はルシフェル。悪魔型のルシフェルよ」 軽く霧が晴れ・・・ルシフェルの異形が姿を現す。 足はザバーカが装備され、素体の両腕はチーグルを装備している。その両手には巨大なリボルバーキャノンを持ち、腰にはデスサイズがマウントされていた。しかしなんといっても目を引くのは背中に取り付けられた巨大な羽であろう。 蝙蝠を思わせるそれは、正しく悪魔型たる彼女のために作られたかのように存在していた。その漆黒の羽は夜の闇を思わせる妖しげな色だった。 「・・・・いい趣味してんじゃん」 「それはどうも。それよりもそろそろ始めない? わたし達今日中にあと三回も戦わなくちゃいけないの」 ルシフェルはそういって、リボルバーキャノンの撃鉄を上げる。 「・・・いいよ。それじゃぁ・・・始めようかっ!!」 武装神姫・イレギュラーキャンペーンバトル アメティスタ対ルシフェル・・・開戦 前・・・次
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【武装神姫】セッション3-0【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18943912 追加ハウスルール:ニトリの特殊加工 d66(1d6×2回の組み合わせ)を振って、その出目によって武具強化が出来る。 種類も効果もランダムな博打強化。ガンは今のところ未対応。 ランクBは4回まで、ランクAは3回まで、ランクSは2回まで、ランクSSは1回限り。 武器加工 2回目の出目 防具加工 2回目の出目 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1回目の出目 1 ダメ増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 1回目の出目 1 強化失敗 1000Gが水の泡 2 威力増減 -3 -2 -1 +1 +2 +3 2 防護点増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 3 C値増減 +1 +1 ±0 ±0 -1 -1 3 回避増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 4 命中増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 4 必筋増減 +3 +2 +1 -1 -2 -3 5 必筋増減 +3 +2 +1 -1 -2 -3 5 魔法被ダメ増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 6 好きな種類 選んだ種類による 6 好きな種類 選んだ種類による 追加ハウスルール:≪かばう≫について ≪かばう≫を持たない人でも、補助動作と主動作を消費する事によって、対象に≪かばう≫を行えるものとする。 この≪かばう≫を実行する際、補助動作での行動や魔法の行使等は行えないものとする。 その他は通常の≪かばう≫と同様の制限を受ける。 例:各種練技、賦術等 以上原文ママ。 戦闘特技≪かばう≫を持っていなくても、補助動作・主動作を放棄することで、かばう宣言が出来る? (*1)
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前へ 先頭ページへ 人、人間、ヒューマン。 今現在、地球の食物連鎖の頂点に君臨する種族たるそれは、地球に存在するあらゆる獣に劣る。 犬に噛まれて、最悪死ぬ。 道に落ちているものを食べて、最悪死ぬ。 熱かったり寒かったりで、最悪死ぬ。 身体能力、免疫能力、適応能力etcで動物以下の能力しかもたないそれらが、唯一獣に勝る物、それは頭脳。 人は思考する。 人間は想像する。 ヒューマンは予想する。 犬に噛まれない為に、その習性を理解して手なずける。 道に落ちているものが安全かどうか、知識を持つ。 熱かったら身体を冷却し、寒ければ防寒具を身につける。 本能の命じるままに動く野性を抑え。 頭を働かせる理性を伸ばす。 それが人の人たる由縁であり、最大の武器でもある。 しかし、それはあまりに複雑だ。 人は理性と共に高度な自我を持った。 それは一つとして同じ物は無く、それを完璧に予測するのは困難を極める。 どんなに技術が進歩しても、それを意のままに操る事は出来ない。 それを心の底から痛感している人間―――恵太郎が、ここにいる。 狭いアパートの4分の1を占めるベッドの上に力なく寝そべりながら、その日何度目か解らない疑問を口にする 「何でこうなるんだろうなぁ」 悩む事は無駄ではない。 試行錯誤の果てに正解を見つける、この試行錯誤こそが重要ではないだろうか。 その過程で人の自我は成長していくのではないだろうか。 もっとも、正解を既に見つけているにも関わらず苦悩するということを現実逃避とも言うのだが。 恵太郎の心を掴んで離さない人物、それは他ならぬアリカだ。 だからといって、それは恋のような甘酸っぱいものではなく、どちらかといえば苦いものだ。 アリカは先日のリアルバトルからというもの、恵太郎を師匠と仰ぎ付き纏うようになったのだ。 その原因の8割程は恵太郎自身にあると言えるだろう。 だが、これだけでは恵太郎が苦悩する理由にはならない。 恵太郎が苦悩する理由、それはアリカがかつての自分と被って見えてしまうからだ。 アリカが本当に鬱陶しいのなら、冷たく突き放すという選択肢もある。 しかし、恵太郎にはそれは出来ない。 何故なら、アリカと恵太郎は全く同じ境遇にいるからだ。 もしもアリカを冷たく突き放す、という事を恵太郎がやられた場合。 恵太郎は立ち直れない自信があった。 だから、恵太郎の執る選択肢はアリカを極力避けるという無気力なものだった。 しかし、運命の悪戯というものは、かくも皮肉なものなのだろうか。 恵太郎や佐伯姉弟が通う大学、その門を潜り抜けながら恵太郎は深く溜息をついた。 「何でこうなるんだろうなぁ」 そして、その日何度目か解らない疑問を口にした。 もっとも今までと違う点を挙げるとすれば、その疑問の中心人物がすぐ脇にいる事だが。 「弟子たるもの、何時如何なる時でも師匠に付き添うのがキホンってものです!」 恵太郎の脇でご機嫌な様子で元気に喋るのはアリカだ。 その肩の上ではアリカの武装神姫たるトロンベが困惑半分、興味半分といった様子で静かに座っている。 恵太郎はそれを尻目に、その身に降りかかった不幸を嘆いている。 一体何処の誰がアパートの前でアリカを鉢合わせる事になると想像できようか。 「それにしても、大きな大学ですねー」 そんな事とは露知らず、アリカは周囲を見回しながら感嘆している。 確かに、その大学は大規模な工場を備えているのでその分大きい。 だが、そこまで驚く物ではないのではないかと、恵太郎は内心呟いた。 「あんまりキョロキョロするなよ」 恵太郎は周囲を探るように言った。 どちらかといえば、周囲の視線を測るようにだ。 その理由は単純明快。 アリカが人の目を集めているからだ。 ここは大学であって、遊園地ではない。 アリカのような少女がいる場所ではないのだ。 人数まばらな日曜とはいえ、アリカはそれなりに奇異の視線を集めている。 それが恵太郎の頭痛の種となっているのだ。 恵太郎は、それを振り払おうとするように歩く速度を上げた。 「っと、師匠待ってくださいよ~」 それはアリカにしては速すぎたようで、早足で恵太郎を追いかけた。 空は雲ひとつ無い快晴である。 だが、恵太郎はそれに気付くほどの余裕をまだ持ち合わせていなかった。 重厚な扉の上に掲げられたプレートには『多目的研究室』と書かれていた。 その下には張り紙で『第13班』とも書かれていた。 「師匠、今日は大学で何をするんですか? 今日日曜ですよね?」 「それは全員そろってから説明する」 アリカは小首を傾げつつ、恵太郎に問いかけたが一瞥されただけで満足の行く回答は帰って来なかった。 それに不満を感じたのかアリカは少し膨れているが、恵太郎はそれに触れる事無く扉を開け中に入っていった。 恵太郎の後に続き、部屋に入るアリカ。 その部屋は白い壁に3方を囲まれ、1方はガラス張りの壁だった。 壁際には様々な器材が所狭しと置かれており、部屋の中央にあるテーブルの上では資料と思しきものが山を作っている。 「アリカ、お前を紹介するからちょっと来い」 アリカはそれらを物珍しそうに見てたが、恵太郎の声にそれを中断した。 「コイツがあのアリカです……ほれ、挨拶」 「あ、あの、はじめまして。アタシは水野アリカって言います」 アリカは恵太郎に促されて挨拶したが、緊張しているのか、その身体は強張っていた。 「初めまして、トロンベと申します」 それと対照的にトロンベは落ち着いて挨拶した。 だが、良く見ると身体が小刻みに震えている。 「この人が佐伯 裕也先輩」 恵太郎は裕也を指して短く紹介した。 「おう、よろしくな、譲ちゃん達!」 それに気を悪くする事無く、豪快に挨拶をする裕也。 「にゃーは蒼蓮華なのだー、よろしくなのだー!」 その肩の上で元気一杯に挨拶する蒼蓮華。 「この人が佐伯 裕子先輩。裕也先輩の双子の姉に当たる」 「よろしくね、アリカちゃん、トロンベちゃん」 春の日差しを思わせるのほほんとした口調で裕子は挨拶を交わした。 「初めまして、私はアル・ヴェル。今後ともよろしく」 ポニーテールにしたアーンヴァル型のアル・ヴェルが挨拶をする。 「そういや、茜は来てるんですか?」 一通り紹介が住んだのを見計らって恵太郎は口を開いた。 「ああ、奥の部屋で武装のメンテをしてるぞ」 裕也は指でガラス張りの壁を指差しながら応えた。 「それと、孝也も来てるぞ」 最後に一言付け加えたが、その言葉に恵太郎は顔を顰めた。 「アイツも来てるんですか…」 「我が主をアイツ呼ばわりとは、恵太郎殿はまことに我が主に厳しいで御座るな」 何時の間にやら恵太郎の肩の上で腕を組んでいた忍者型の神姫が口を開く。 「確かに多少問題はあれど、あれはあれなりに良いところがありまするぞ」 「ああ、解ったから降りてくれ、トリス」 トリスと呼ばれた神姫は、恵太郎の言葉を聞き入れ、テーブルの上へと移動した。 「アリカ殿、トロンベ殿。お初にお目にかかる。拙者、忍者型神姫のトリスと申す。以後お見知りおきを」 そして、アリカとトロンベに向かい丁寧に挨拶した。 アリカはそれに軽く返礼すると恵太郎へ向かい問い掛けた。 「師匠、茜って?」 「ちょっとした事で知り合った女の子なんだけど、凄い技術を持っていたからスカウトしたの。それと、コーヒーしか無いけど良いかしら?」 アリカの質問に裕子が代わりに応えた。 それと同時にインスタントのコーヒーを差し出した。 「あ、ありがとうございます」 アリカはコーヒーを受け取り、ガラス張りの壁に視線を送る。 その奥の部屋はこの部屋と違い黒い壁、というよりコンクリートむき出しの部屋で、機械的な装置が多数設置されており、床には大小無数のコードが這っており、天井にはダクトやケーブルが縦横無尽に奔っている。 そこでは白衣を着た二人の人間がなにやら作業をしているのが見受けられた。 それと同時に、アリカは言いようの無い不思議な感覚に襲われた。 「……まさか、ね」 アリカはそれを振り払うように首を振った。 「ご主人様、どうかしましたか?」 主の変化を機敏に察知したトロンベがアリカに声をかけた。 「ううん、何でもないの。ありがとう、心配してくれて」 それに人差し指で頭を撫でながら事によって応えるアリカ。 トロンベは心地良さそうに目を閉じるだけだ。 「茜ちゃん、孝也君、皆揃ったわ」 テーブルの上に置かれたマイクに喋りかけるアリカ。 それはスピーカーを通じて奥の部屋へと呼びかけられた。 「解りました~、今行きます」 確かに少女の、ただ若干機械的な響きを伴った声が恵太郎達の部屋に響いた。 少し遅れてガラスの壁が天井へと向かいスライドした。 それが完全に天井の中へと収納されるのを確認した人物が恵太郎達の元に走りよりつつ口を開いた。 「けーくん、会えて嬉し…アダッ!」 恵太郎は走り寄ってきた人物に容赦のない蹴りを叩き込んだ。 「寄るな、鬱陶しい」 腹部を蹴られたその人物は地面をのた打ち回っている。 「…師匠、誰ですかコイツ」 アリカはそれをやや離れた位置から見下している。 「ああ、君がけーくんの弟子のアリカちゃんだね! ボクは高野 孝也、けーくんの親友だよ」 「誰が親友だ、誰が」 いつのまにか立ち直った孝也は、恵太郎から冷たい視線を浴びせられた。 「なーんかオタク臭いわね…」 「あはは、手厳しいね」 アリカは孝也の白衣に眼鏡という出で立ちを見て、正直な感想を漏らした。 しかし、それに対して孝也は困ったように笑うだけだ。 その様子を傍観していた恵太郎だが、ふと思い出したように口を開いた。 「…アリカの事、お前に話してたか?」 言いながら佐伯姉弟の方も一瞥した。 「それなら、私が話しときました」 今まで黙っていた、もう一人の白衣の少女が口を開いた。 眼鏡に白衣と、孝也と同じ服装だが、こちらは様になっていてどっからどう見ても研究者だ。 「アリカの事なら私が一番知っていると思いましたから」 にこやかに言い放つ少女。 それをワナワナとしながら見ていたアリカは口を開いた 「何でアンタがココにいるのよ!?」 その叫び声は、四つ隣の研究室まで聞こえたという。 世界は広いようで狭い。 芸能人が近場に住んでいたり、学校の友人が実は親戚だったり。 幼馴染と10年ぶりに再会したり、街中で親とすれ違ったり。 人と人との縁というのは、本当に摩訶不思議な物だと思う。 それでも、こんな縁は御免だ。 アタシの目の前では茜が師匠達と和やかに談笑している。 それは永年連れ添った中間達、といった様子でアタシのような新参者が入り込むことすらおこがましく感じる。 「マスター、そろそろ今回の目的を話されては?」 今まで他の神姫とテーブルの上で談笑していた師匠の神姫、ナルちゃんが口を開いた。 「ああ、そうだったな。……実は先輩達に頼みたい事がありましてね」 師匠は周囲をぐるりと見回しながら言った。 その中に、アタシが少しでも入っていれば良いのに。 「なんだ、恵太郎が頼みとは珍しいな」 「ボクに出来る事だったら何でもやるよ、けーくん」 裕也先輩と高野が快く快諾している。 声には出していないけれども、裕子先輩や茜の表情からは悪い感情は感じられない。 「単刀直入に言うと、ナルの装備が壊れました。よって、その修復を手伝って貰いたい訳です」 「ああ、アリカが壊したアレですね」 茜がアタシの方を見ながら言った。 今気付いたが、ここでの茜はちゃんと人の目を見て話している。 それに学校で話すときと随分感じが違う。 この感じは、茜の家に遊びに言った時と同じだと思う。 つまり、ここにいる人たちにそれほど心を許していると言う事なのだろうか。 「私達で良ければ幾らでも力になるわ」 「ありがとうございます、先輩」 どうやら話が纏まったようだ。 師匠が懐からだしたメモリーカードを差し出して、色々と話し込んでいるのが聞こえる。 その中にはアタシが聞いた事の無い単語が飛び交うので、師匠たちが大学生なのだと実感する。 そして、それに茜が混ざっているのに違和感は感じられない。 アタシはそれに加わる事無く、ただ傍観に徹するのみ。 残り少なくなったコーヒーを口に含みつつ、視線を泳がす。 「そうだけーくん、アリカちゃんに大学紹介してあげたら?」 その言葉に身体が反応する。 「そうですよ先輩、ここは私達に任せてどうぞごゆっくり」 「いやマスターの俺がいないと色々問題が…」 「気にすんな恵太郎! ちゃんと改造しといてやるから!」 「何ですか改造って。俺はただナルの装備を修復しにきただけですから…」 「恵太郎君、年上の言う事は聞くものよ?」 師匠は思いっきり抵抗していたが、裕子先輩に言われると黙ってしまった。 ……これはチャンス? 「解りました。後は任せますけど、おかしな事はしないで下さいね?」 師匠は念を押すように、低い声で言う。 それと同時にアタシの方を見てから、指で扉を指した。 外に行くという合図だろう。 アタシはコーヒーをテーブルの上に置いて師匠に歩み寄った。 「そうだ、アリカ。トロンベちゃんもメンテしとくわ」 途中で茜に呼び止められたので、渋々トロンベを手渡した。 その間際、トロンベがどうする~アイ○ル~的な視線を送ってきたので、頭を優しく撫でてあげた。 「大丈夫、直ぐに戻ってくるから、ね?」 「…はい! ご主人様」 元気に応えるトロンベを確認して、師匠の元へと向かう。 師匠は既に廊下に出ており、扉の隙間から雲ひとつ無い快晴が見えた。 「さて、これで邪魔者はいなくなりましたね」 恵太郎とアリカが出て行ったのを見計らい、茜が口を開いた。 かけた眼鏡のレンズが反射して、その眼を窺い知る事は出来ない。 「じゃあ、とっとと作業始めようか!」 裕也がやたら元気に音頭を取る。 「…ただ直すだけというのも芸が無いでござる」 その時、孝也の頭上から声がした。 トリスは腕を組み、足を揃えて静かに続ける。 「ナル殿の刃鋼と銃鋼は確かに高性能でござる。しかし、あの御寮人にはもう物足り無いのでは御座らんか?」 「そうえば恵太郎君、ナルちゃんの装備をあれにしてからもう一年経つのね」 「そうだな、そろそろ強化の頃合かもな、姉貴」 トリスの言葉に佐伯姉弟も同意しているようだ。 それを確認し、満足そうに頷くトリス。 「そうであろう、そうであろう。今のナル殿に必要なのは機動力と火力の両立、そして隙の無い間合いだと拙者は思う」 「けど、けーくんのいない間に勝手に弄っちゃまずいんじゃ…」 乗り気ではない孝也に対し、茜はノリノリだ。 「…そういえば新型の荷電粒子砲を開発したって、四班の人たちが言ってましたねぇ。それに六班は燃料電池の小型化に成功したとも聞きましたよ。」 顎にひとさし指を添え、上方を見ながら喋る茜。 その言葉に反応したのは佐伯姉弟だった。 「なるほど、じゃあ俺は四班の連中と交渉してくるか」 「じゃあ私は七班の人たちに頼んでくるわね」 そういい残すと、颯爽と部屋から出て行った。 後に残されたのは茜と孝也だけだ。 孝也は未だに乗り気でないらしく、困った顔をしている。 「主殿、首尾良く強化できれば恵太郎殿もお喜びになられますぞ」 その肩に飛び降りたトリスは軽く耳打ちをした。 「でも、ナルちゃんの意思は…」 「私はむしろウエルカムです」 だいぶ心が揺れてきたのか、孝也の視線が泳いできた。 そして、最後の希望として話しかけたナルにも快い快諾を貰ってしまった。 「それでは制御用プログラムを作りましょうか。先輩、私だけではキツイので援護お願いします」 もはや言い逃れる術は無かった。 「ただいま戻りました」 広大な敷地面積を誇る大学をアリカに案内していた恵太郎が研究室へと帰ってきた。 その顔には明らかな狼狽の色が現れている。 「ただいま戻りました~!」 そんな恵太郎とは対照的に、元気一杯に研究室へと飛び込んだアリカ。 その顔には満面の笑みが浮かんでいる。 「よう、遅かったな恵太郎」 奥の部屋から裕也の言葉だけが響く。 「ここの敷地面積知っているでしょう…」 それに力なく椅子に腰掛けながら応える恵太郎。 その言葉からは肉体的な疲労と言うより、精神的な疲労の方が多く見える。 「どうだった、アリカちゃん?」 「はい、凄い楽しかったですっ!」 裕子の問いに満面の笑みで応えるアリカ。 その表情からは翳りは一切無く、その言葉が本意であることを物語っている。 「で、けーくん。何処を案内したんだい?」 孝也は壁際に備えられたパソコンに向かいながら問い掛けた。 「ひとまず一班から十二班まで順番に。その後MMS博物館を回って資料室と工場見学。最後にバーチャルマシーンセンタの順に。」 「成る程、それは疲れるね」 机に突っ伏しながら応えた恵太郎に軽い労いの言葉を掛ける孝也。 「神姫好きにはたまらないコースですね、先輩。どうぞ」 「ん、ありがとう」 恵太郎にインスタントコーヒーを手渡す茜。 「はい、アリカも。あとトロンベちゃんのメンテだけど、当然ながら問題は無かったわ」 「悪いわね」 アリカはコーヒーとトロンベを受け取ると、恵太郎の隣に座った。 「ご主人様、外はどうでしたか?」 「そりゃ凄かったわよ~。初期に作られたというMMSのアーキタイプとかあって……」 アリカはトロンベに今見てきたことを話して聞かせている。 茜はそれを一瞥すると奥の部屋へと歩いていった。 暫しの間、研究室にコーヒーの香りとキーボードを叩く音、そしてアリカとトロンベの談笑が支配した。 「ところで、ナルの修復は?」 一息ついたところで、恵太郎は誰にでもなく話しかけた。 「後は孝也君が制御プログラムの最終調整をしている所よ」 「……制御プログラム? 何か問題でもあったのですか?」 恵太郎の問いに裕子が応える。 その問いが若干予想外であった為、恵太郎は二度目の疑問を口にした。 「まあ、出来上がってからのお楽しみね」 しかし、その問いに満足の行く回答が反される事は無かった。 恵太郎はそれ以上追及する事無く、孝也へと視線を移した。 孝也は忙しなくキーボードを叩きディスプレイを睨んでいる。 裕也と茜は奥の部屋で作業をしている。 裕子は資料の整理をしている。 恵太郎とアリカは並んでコーヒーを飲んでいる。 名状しがたい、しかし、悪くは無い空気が研究室に満ちていた。 「ところで、四班と七班の連中から嫌な視線を感じたんですが、知りませんか?」 「それも出来上がってからのお楽しみね」 恵太郎はそれ以上追従出来なかった。 「ふう」 その空気の中、孝也が静かに溜息をついた。 研究室にいる全員の意識が孝也に集中する。 「制御プログラム、何とか出来たよ。かなり突貫だから荒が有るのは許してもらいたいけどね」 そして、パソコンからメモリーカードを抜き取ってそれを茜に手渡した。 「ご苦労様です、先輩。では、こちらへどうぞ」 茜に促されるままに恵太郎達は奥の部屋へと向かう。 地面を這うケーブル類をうっかり踏まないように、全員が注意して歩く。 目指すは部屋の隅に陣取る天井まで届く円柱状の装置。 その脇に置かれたコンソールを叩き、スロットにメモリーカードを挿入する。 「それでは恵太郎殿、生まれ変わったナル殿をご覧あれ」 コンソールの上に、何処からとも無く表れたトリスが恵太郎に恭しく頭を垂れる。 それとほぼ同時に、円柱状の装置の真ん中から上下にスライドした。 その中からは大量のスモークが溢れ出し、油圧式アクチュエーターによりナルが固定された台座ごと押し出された。 徐々に薄くなっていくスモークと共に、ナルの全貌が明らかになる。 それを見て、恵太郎は絶句した。 「何…この……何?」 それも無理は無い。 何故なら、今のナルの姿は以前とは比べ物にならない姿になっていたのだ。 まず頭部には目を惹く大きな、紅い角が生えた。 そして脚部はストラーフ型の基本パーツを装着。 が、その右腕はその身の丈と同等のサイズの砲身と化している。 次に左腕自体も大型化し、持つ刃鋼は規則正しい割れ目が入った不思議なモノになっている。 最後に最も異形の部分、背中である。 腰部には元からあった補助ブースターを改造したと思しき巨大なブースターが。 そして、背中部分には腕、と言うより触手が生えている。 「ただ装備を修復するだけではつまらないと思ったので、色々と強化してみました」 茜はその様子を楽しむように解説を始めた。 「まず、右腕の銃鋼は四班が新たに開発した荷電粒子砲を搭載しました。従来のトライリニアアクセラレータ型ではなく、シンクロトン型へと変更しました。これによって装置自体は巨大化しましたが、その分耐久性能は抜群に上昇、更に、同型の荷電粒子砲を一対に組み合わせ、交互に発射する事で威力は従来のままに連射性能を底上げしたので以前のようなチャージの必要はありません。次に左腕の刃鋼ですが、これは裕也先輩のアイデアを基に設計しました。俗に言う蛇腹剣というものなのですが、最大射程は10smと中距離戦闘では抜群の戦力を誇ります。 また、ある程度の操作が可能なので熟練すればまさに手足のように扱えるかと思います。今回強化した銃鋼と刃鋼ですが、その威力と引き換えに機動性を大きく削ぐ結果となってしまいました。簡単に言えば、重すぎたんです。それを補う為に背部ブースターの巨大化と全身各部に補助スラスターの設置で、一応は機動性を確保しました。ですが、重量が極端に増加してしまい、立つことすら侭なら無い状態になってしまった訳です。その為に、身体を支える為に三つ目の腕。鉤鋼を追加したところ、身体のバランスを取ることが可能になったばかりか、かなりトリッキーな動作も可能になりました。また、鉤鋼自体を使った攻撃も可能でそれなりに使い易いかと。最後に一つ留意点なのですが、銃鋼・刃鋼・鉤鋼のそれぞれの武装を使用中は、他の武装を併用できない事を覚えておいて下さい。具体的には、銃鋼を使用する為には左腕を使った照準補助と鉤鋼を使った姿勢補助が必要なんです。銃鋼は連射性能を飛躍的に強化したんですが、その反動自体は以前より悪化しているんです。次に、刃鋼の場合ですが、これも鉤鋼の姿勢補助が必要です。銃鋼は反動等の理由で併用はほぼ不可能です。最後に鉤鋼ですが、これは鉤鋼を使用している間は姿勢制御が出来ないのが理由です。それと、頭部ホーンは高性能センサー群です。以前と同じドップラーセンサーと超音波センサーを搭載しています……何か質問はありますか?」 心なしか嬉々としている様に見える茜とは違い、恵太郎は呆然としている。 「マスター、似合いますか?」 当のナルはというと、頬を若干紅く染めて恵太郎に問い掛けている。 その表情だけ見れば可愛らしいものだが、その全貌と合わせてみると悪魔の囁きにしか見えない。 「……ああ、最高に似合っているよ」 ようやく我に返った恵太郎が、ナルを褒める。 その表情に嘘偽りの影は無く、其方かといえば清々しい表情だ。 「茜、バッテリーはどうなってる? 前のままだとガス欠で動けないだろう」 「はい、第七班の新型燃料電池のお陰でバトルには一切支障はありません。銃鋼自体も外部イオン供給型なので、打ち放題です」 「パーフェクトだ、茜……孝也、鉤鋼の制御プログラムの内訳は?」 「通常歩行、走行、跳躍、武装使用時の四種類だけだよ」 「ナルは元々腕が四つある、多少の負荷は許容範囲だ。そこら辺を考慮して、自由度を上げて置いてくれ」 「分かったよ、けーくん」 「裕也先輩、刃鋼の耐久性は?」 「刀身部分は秒速5km/sの弾丸にも耐えられた。連結部分は集束モノフィラメントワイヤーで防護してはいるが、秒速2km/sレベルが限界だ」 「ありがとうございます、充分ですよ」 そのやり取りは研究者というより、悪の秘密結社という方が似合っていた。 「全く、先輩達には何時も驚かせられますよ。こりゃ馬鹿と冗談が総動員だ」 もう吹っ切れたのか、全員を見回しながら言った。 「師匠、凄いじゃないですか! これで向かうところ敵無しですねっ!」 アリカはまるで自分の事のようにはしゃいでいる。 「そうでもないさ」 「へ?」 アリカと対照的な恵太郎は、視線をアリカから裕子へ移した。 「裕子先輩、ナルの作動テストとして手合わせ願います」 その言葉にはある種緊迫したものが混じっていた。 「ええ、良いわよ」 裕子の表情は何時ものように小春日和の陽射しのようだ。 「…アリカ、良く見て置けよ」 「も、勿論ですよっ!」 恵太郎は険しい表情でアリカに言った。 バトルフィールド『宇宙船』 剥き出しの金属フレームに金網の足場。 余計な装飾は一切無く、あるのは金属の冷たい感覚。 戦う為に生み出された武装神姫の戦場に相応しい……ナルは新たな武装を纏いそんな事を考えていた。 今回の相手はアル・ヴェル。 もう両者共にフィールドへの転送は終わっている。 普通のバトルなら、こんな悠長に構えている暇は無い。 だが、これはナルの新武装の作動テストだ。 あくまで、名目上はだが。 恐らく恵太郎は本気だ。 ナルはそう考えていた。 「お待たせしました、ナル」 頭上から声が掛けられた。 「いえ、お気になさらず」 その声の元へ視線を送る。 そこには空中を踏み締めてナルを見下ろす雪の様な白い髪の神姫―――アル・ヴェルが居た。 アーンヴァル型の彼女だが、その装備はアーンヴァルとは異なるシルエットを醸し出している。 胸部アーマーはナルのモノと酷似している。 腰部のブーストアーマーもナルのモノと酷似している。 唯一違うのは、脚部。 脚には足首部分から三対の巨大な鋼の羽が生えている。 武装名は『羽鋼』 「裕子先輩の神姫、ナルちゃんに似てる…?」 茜はディスプレイに映る両者を見て、思わず声を漏らした。 赤と黒のボディ、白いボディ。 機体色の違いこそ有れど、それほどまでに両者は似通っていた。 「そりゃそうさ。恵太郎はアル・ヴェルの武装を模倣してナルの装備を作ったんだからな」 裕也はさも当然と言わんばかりだ。 「そんな事より」 そこに茜が割り込んだ。 「アリカは運が良いわ。だって裕子先輩のバトルしている所が見れるのだから」 「どう言う事?」 アリカは茜の真意を測りかねている。 「裕子先輩はこの大学最強の神姫マスターなんだよ」 それに端的に答える孝也。 しかし、その目線はディスプレイに釘付けだ。 気付けば蒼蓮華やロン、トリスですらディスプレイを凝視していた。 『ナル、初めは銃鋼だ』 恵太郎の声がバーチャル空間に響く。 『アル・ヴェルは攻撃に当たらないように避けてね』 それに続き、裕子の声が響く。 ナルとアル・ヴェルは無言で頷きある程度距離を取る。 「…師匠と手合わせするのは久しぶりですね」 ナルは全身の駆動チェックを行いながら呟いた。 その呟きには哀愁に満ちていた。 「マスターはバトルを好みませんからね」 アル・ヴェルの声は、ナル程では無い物の哀愁に似た響きが混じっていた。 「今日は、師匠を満足させられると良いのですが」 ナルは刃鋼で銃鋼を支えながら持ち上げた。 背部では鉤鋼に備え付けられた巨大な鉤爪が足元の金網を抉っている。 「ふふ、そんな気張らなくても良いわ」 アル・ヴェルは羽鋼を展開させた。 その翼長は悠に3smはある。 『よし…ナル、用意が出来たら好きなタイミングで発射してくれ』 ナルの用意が整ったのを確認した恵太郎から通信が入る。 「了解です、マスター」 それに短く応えるナル。 「…行きます、師匠」 「来なさい、ナル」 その言葉に、哀愁は無かった。 構えた銃鋼から爆音と共に光弾が放たれた。 上下に二つある銃口から交互に、凄まじい勢いで光弾と爆音を排出する。 しかし、光弾を撃ち出す事にナルの身体は凄まじい反動を受けていた。 『ナル、大丈夫か?』 恵太郎からの通信。 その声音には若干緊張の色が含まれている。 「…はい…ッ……問題、ありません」 銃鋼を撃ち続けながら、擦れた声で返答するナル。 『……もう暫く撃ち続けてくれ』 暫しの沈黙の後、恵太郎から続行の指令が下る。 「…了解」 それに簡潔に応えるナル。 その眼はアル・ヴェルだけを見据えている。 銃鋼から放たれる光弾はまさに雨の様だった。 しかし、それは反動によるブレで命中精度は良いとは言えないものだ。 その証拠に、アル・ヴェルは軽く身体を捻ったりするだけで大きな回避運動を取っていない。 が、背後の壁に命中した光弾は悉く被弾箇所を貫いている。 『ナル、銃鋼のテストは終了だ。お疲れ様』 恵太郎の通信と同時に銃鋼を停止させる。 「ありがとうございます、マスター」 支えていた刃鋼と銃鋼を下ろして応えるナル。 『…何か問題点は?』 「今のところありません」 『そうか、次は刃鋼だ。準備が出来次第好きに始めてくれ』 「了解です」 事務処理のような応答を繰り返す二人。 ナルは無表情で刃鋼を前方に突き出す様に構えた。 そして、ガチャリという音と共に刀身に規則正しく入った割れ目を境に分裂した。 紅と黒の刀身は何節にもわかれ、刀身同士を繋ぐのは複合ワイヤーのみ。 その間接部分ごとに自在に折れ曲がるそれは、最早剣では無い 床に分離した刀身が落ち、甲高い音を鳴らす。 それを確認したナルは左腕を高く掲げると、刀身の四分の一程が吊り下げられる。 ナルは左腕を振り下ろし、続けざまに右に跳ね上げ、そこから左に鋭く振った。 それと呼応して刃鋼が激しく波打つ。 そして、鋭く、速く、迸った。 刃鋼はまるで大蛇の様に蠢きながら、アル・ヴェルへと襲い掛かった。 伸縮自在の間接を持つそれは、瞬間的には10sm程にもなる。 そして、その先端部分は遠心力やらなにやらで相乗的に破壊力を増す。 ここでようやくアル・ヴェルが回避行動らしい回避行動を取った。 空中で脚に力を込めるようにしゃがみ込んで、刃鋼が目前に迫り自身に衝突すると言う瞬間に一気に翔けた。 その速度は神姫の眼を持ってしても図り知ることは出来ない。 それほどまでに、速い。 目標を見失った刃鋼は背後の建物を大きく抉る。 ナルはそれを確認し、左腕を大きく引いた。 それに呼応し、間接が縮まる。 一瞬で元の剣の形状へと戻った刃鋼を下ろし、前方に下りてきたアル・ヴェルを見据える。 『ナル、調子はどうだ?』 「…銃鋼ほどではないですが、反動が大きいです」 ナルは左腕を見ながら言った。 機械の腕に疲労に似た感覚が襲っているのだ。 恐らく、荷重に耐え切れないアクチュエータが悲鳴を上げたのだろう。 『なるほど、そこらへんは調整が必要だな』 恵太郎の言葉に、感情は込められていない。 「そろそろ良いかしら、マスター?」 アル・ヴェルが裕子に向かい通信を開いた。 その声には何かを待望する、そんな色が含まれていた。 「マスター……ボクもそろそろ我慢できないよぉ」 ナルの口調が変わった。 若干俯きながらも、その瞳は紅く輝いている。 『…良いわよ、アル・ヴェル。たまには羽を伸ばさないとね』 裕子の諦めたような、それでいて優しげな声が聞こえてきた。 「ありがとう…マスター」 アル・ヴェルはゆっくりと浮上しながら礼をした。 『ナル、お許しが出たぞ。好きなだけ大暴れしな!』 恵太郎は凄く嬉しそうだ。 「あはは、言われなくても……そのつもりだよぉ!」 そう叫ぶと同時に、ナルは銃鋼を構え、無数の光弾を穿き出した。 先程よりも雑で疎らな光弾の雨に、アル・ヴェルは羽鋼の出力を全開にして超高速で翔け回り、回避する。 その姿を目で捉えることが出来ないナルだが、それでも攻撃を止めない。 次第に光弾の及ぶ範囲が広くなって行く中、ナルのドップラーセンサーは確かにアル・ヴェルの姿を捉えていた。 「そこだぁ!」 支えていた刃鋼を左に大きく振り抜く。 刀身は伸びながらアル・ヴェルへと迫る。 ナルは銃鋼の欠点である集弾性の悪さを逆に利用した。 逆に光弾をばら撒く事によって、アル・ヴェルの逃げ道を塞いだのだ。 そして、動きが止まる瞬間を予測して刃鋼の攻撃を加える。 「なるほど、いい作戦ですね」 しかし、それはアル・ヴェルにはまだまだ通用しない作戦のようだ。 迫ってきた刃鋼を、アル・ヴェルは蹴り飛ばして凌いだ。 勿論、ただの武装では刃鋼を蹴り返す事など出来ない。 その秘密は、羽鋼にある。 羽鋼は電磁推進装置を利用した機動装備である。 従来のブースタータイプと違い、一種のバリアーによる反発力を用いるこの装備は爆発的な速度と運動性能を得る事が出来る。 そして、アル・ヴェルはこの反発力を刃鋼にぶつけたのだ。 「まだまだ脇が甘いですね」 一気に、一瞬でナルへと接近したアル・ヴェル。 ナルの息がかかるほどの近距離で一言言うと、ナルに強烈なローキックを浴びせた。 先程同様バリアーの反発力を乗せたそれはナルの巨体を軽々と吹き飛ばした。 それでもアル・ヴェルは攻撃を止めない。 吹き飛ぶナルに一瞬で追いつくと、ナルの顎を蹴り上げた。 再び軽々と上方へと吹き飛ぶナル。 ナルが最高到達点に先回りしていたアル・ヴェルは身体を横向けに回転。 そして、渾身の力を込めて蹴り落とす。 それは必殺の威力を孕む攻撃であり、喰らえば唯では済まない。 否。 唯ではすまないのは両方だった。 アル・ヴェルの脚がナルに触れる一コンマ前。 その瞬間、ナルの銃鋼はアル・ヴェルへと照準を定めていた。 爆音が響き、爆炎が渦巻く。 それと同時に両者は弾かれた。 ナルは床に、アル・ヴェルは壁に叩き付けられる。 銃鋼の光弾と羽鋼のバリアーの高エネルギーの衝突が爆発を引き起こしたのだ。 「あははぁ、やっぱ師匠は強いやぁ」 刃鋼を杖代わりにし、鉤鋼で体制を立て直すナル。 見た目は酷い損傷だが、その眼の闘志は消えていない。 「ナルも随分と肝が据わってきましたね」 壁にめり込んだ体を引き抜き、空中を踏み締めるアル・ヴェル。 しかし、その身体に損傷は見受けられず身を包む覇気も衰えない。 「さぁ、休憩はオシマイ。第二ラウンドだよぉ」 ナルは刃鋼を前方に向けたまま、左腕を深く引いた。 「休憩なんて挟むのも勿体無い」 羽鋼を大きく羽ばたかせ、前傾姿勢になった。 彼女達は武装神姫。 戦う事に、理由は要らない。 アル・ヴェルの羽鋼が瞬く。 度を超えたバリアーの過剰出力が強い光を伴わせる。 その速度は最早如何なる方法を取ろうとも、捉えきれるものではなかった。 だから、ナルは予測した。 左手を勢い良く繰り出す、一般に言う突きだ。 ただし、刃鋼の突きのリーチは10smオーバーだ。 アル・ヴェルは最高速度で飛翔した。 それはつまり機動性を殺すことだとナルは考えた。 そして目標は自分。 その道筋は一本道。 そこに、刃鋼を置いておけばどうなるか? 単純明快、正面衝突である。 しかし、アル・ヴェルの機動性はナルの思惑を遥かに凌駕していたのか。 アル・ヴェルに迫り来る刃鋼。 その衝突の寸前に、アル・ヴェルが進路を変えたのだ。 アル・ヴェルの羽鋼はいかに速く動いている状態でも、自在な機動を実現したのだ。 そして、最高速度のままナルに激突。 純粋な加速エネルギーだけの攻撃。 だが、それだけで神姫を粉砕するには充分すぎる破壊力を孕んでいる。 決まった。 アル・ヴェルは思った。 確実にナルの胸部を貫いていると。 自身の勝利が決定したと。 が、心のどこかでそれを否定したかった。 「あははぁ、やっと捕まえたぁ」 そして、それは否定された。 アル・ヴェルの脚は確かに貫いていた。 胸部をガードした銃鋼を貫いていた。 その上、鉤鋼でアル・ヴェルの脚をがっちりと掴んでいた。 「師匠…ボクの……腕は…三つあ…る…んだ……」 だが、アル・ヴェルの爪先がほんの少し、ナルの胸部を抉っていた。 すっかり暗くなった帰り道。 アリカと茜は帰路に付いていた。 「それにしても凄かったなぁ…」 アリカはナルとアル・ヴェルとのバトルを反芻している。 「私もアル・ヴェルさんのように強くなれるでしょうか…」 トロンベもバトルを反芻しているようで、小さく呟いた。 悲観的な言葉に対し、その声音は強い意志を感じさせた。 「ふふ」 その光景を見ていた茜が思わず笑い声を漏らした。 「何よっ、文句あるの!」 何となく気恥ずかしいのでそれに食って掛かるアリカ。 「ただ、アリカって変わったよねぇ、って」 アリカの目を真直ぐ見据えて微笑む茜。 その様子にいきなりしおらしくなるアリカ。 「変わったといえばアンタの方よ……今まで大学の研究室に行ってたなんて一言も言ってくれなかったじゃない」 俯きながら少し拗ねる様に言う。 「…アタシが先輩達の研究室に通うようになったのは丁度一年前からよ。その時、アリカが変わったと思っていたの。私の好きなアリカはもう居なくなったと思ったわ。私は寂しかった。その寂しさを埋めてくれるのは先輩達だったわ。だからアリカに言わなかったの。もし、アリカがずっとあのままだったら私はアリカを見限っていたわ」 急に真面目な口調で喋る茜。 「じゃあ、何で今更」 歩くのを止めてアリカに向き直る茜。 「私の大好きなアリカが帰ってきたからよ」 そう言うと、茜はアリカに軽く触れるだけのキスをした。 「…随分と久しぶりにしたわね」 顔を真っ赤に染め、そっぽを向きながらアリカは言った。 「ふふ、じゃあ久しぶりにアリカの家に泊まろうかしら?」 悪戯っぽく笑いながら歩き出す茜。 「マスター、トロンベに噛まれますよ」 それに空中散歩していたロンが喋った。 「わ、私はご主人様さえ良ければ…その……別に」 ロンの言葉に顔を真っ赤にしてトロンベは反論した。 「良いわよ…皆で泊まれば良いじゃない」 アリカは蚊の鳴く様な声で言った。 しかし、それは茜に耳にきっちり入っていた。 「じゃあ今日は大好きなアリカのお家でお泊りパーティね?」 軽くスキップをしそうな茜に、アリカは咆えた。 「気安く好きだの言わないでよっ!」 その顔はトマトの様に赤かった。 先頭ページへ 次へ
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武装食堂 小さな町の、小さな食堂。 そこには、神姫を連れた変わったコックさんがいました。 ちょっと不器用だけど頼りになるその人との出会いは、やがて僕の、私の、みんなの運命を少しづつ変えていくのでした―。 著・ばるかん ※一部設定をMighty Magicよりお借りしています。 ※コラボ歓迎。また、他作品様のキャラクターが登場する事があるかもしれません。 不定期更新です。早かったり遅かったり。 ※物語の関係上、実在の地名と架空の地名が混在していることがありますが、ご容赦ください。 更新の履歴。 2012/1/7・・・全話更新完了。 3/3・・・第二十話+αをUP. 5/25・・・第二部スタート、第二十一話をUP. 5/27・・・番外その3を二編に分けUP. 8/24・・・第二十二話をUP. 10/3・・・第二十三話をUP. 2013/2/23・・・第二十四話をUP. 2013/8/18・・・第二十五話をUP. 2014/8/10・・・お知らせを追加。 ◆お知らせ◆ どうも、お久しぶりですばるかんです! 初めての方ははじめまして! 前回の更新からほぼ一年たってしまいました!そろそろ本編の方を再開したいと思います! ……とまあ、あいさつはこのくらいにして、 なんとこの度、8/15~17日に開催されるコミックマーケット86にサークル出展いたします! ワーイ!告知がおせえよバカ! 今回はコピー本の頒布を行う予定です。詳細は以下に記しました。 コミケにご来場の方々はぜひお立ち寄りくださいませ。 ―以下、本の詳細― この夏、アイツらが帰ってきた! アキラ「ホントだわ!一年近くも放っておかれたわ!」 なんと武装食堂の面々が同人誌に!? ストーリーは完全描き下ろし! 雅「んなことやってないで本編を進めなさいよっ!」 ではスペースも惜しいので紹介スタート! アキラ&雅「こるあああああああ!!」 武装食堂 夏休み特別編 『有明大決戦! ビートルA VS FOREVER 『G』 』 ―――ある日、明石食堂を訪れた謎の神姫。 「おなか、すきました」 その神姫は、何も持っていなかった。 「アキラさんのお料理、気に入ったんですか?」 「アンタ、名前とかないの?」 「……じゃあ、カナってよんでください」 謎の神姫『カナ』と、心を通わせるメリー。 「どうして、くぬぎの樹ばっかり見てるんですか?」 「……さびしいなぁって。きれいだけど、それがよけいにさびしいの」 「じゃあ、私と友達になりましょう」 「ともだちって?」 「あ、んーと……口で説明するのは難しいんですけど、えへへ」 時を同じくして、有明で開催される「ビートルAフェスティバル」。 「早く早く! 行きましょうよアテナさん!」 「ちょ、ちょっと! そんなに引っ張らないで!」 ―――しかし、ちびっこたちの夢は無残に打ち壊される――― 「ぐぎぎ……」 「クレアっ! 貴女、クレアを離しなさい!」 「このおおっ!『紅葉おろしっ!』 「なんでですかカナさん……どうしてこんなことするんですか……」 「カナはね、生きてみたいの」 「カナさんっ!」 「あなたは一体! 何者なんですか!」 スプーンと、ちっぽけな虫けら。 これは、たったひと夏だけの、精一杯生きたかった少女の物語。 8/15(金)、西こ―17a「ばるかん星」にて頒布予定! ……はい、以上があらすじです。 アキラ「長げえな!」 雅「あれ!?アタシの出番少なくない!?」 お楽しみに! 第一部 登場人物たち・・・微妙にネタバレを含むかもしれません。 第一話 塩と米だけで 第二話 鰯も七度洗えば鯛の味 第三話 箸とスプーンとおしゃべり子猫 第四話 味噌汁とナミダ 第五話 お酒は二十歳になってから 第六話 欲望の蟹・・・※微エロ、神姫破損描写あり。また、ウサギのナミダ、HOBBY LIFE,HOBBY SHOPとコラボしてます。 第七話 あなたの街を宣伝! 第八話 ボヌールからの挑戦状 前編・・・深み填りと這上姫より設定の一部をお借りしています。 第九話 ボヌールからの挑戦状 後編・・・深み填りと這上姫より設定の一部をお借りしています。 第十話 やって来た小町娘 第十一話 思い出のおせんべい 第十二話 ヒーローにかけた夢 第十三話 灰染の女神 第十四話 チョコレートケーキを追跡せよ!・・・HOBBY LIFE,HOBBY SHOPとコラボさせて頂きました。 第十五話 桐皮町コーヒー・フルーツ戦争 第十六話 ファンシーズのオーナー 第十七話 悪意のオードブル・・・ウサギのナミダおよびキズナのキセキより設定の一部をお借りしています。 第十八話 一人じゃない 第十九話 火事とケンカは! Aパート 第十九話 火事とケンカは! Bパート 第二十話 アテナから勇者へ 番外コーナー 番外その一 ヂェリー・パニック・アンド・ラブ・・・色ボケテンタクルスのせいでピンクシーン有り。また、ぐだぐだリンゴのSSとコラボさせて頂きました。 番外その二 食人姫 (しょくじんき)・・・桐皮町の物語の裏で起こっていた、ある出来事。 ※暗いかもしれないです。 番外その三 にっくきむねのにく ♯1・・・15cm程度の死闘の世界にお邪魔しました。 番外その三 にっくきむねのにく ♯2 第二部 強襲、クロノスの使徒 暗躍する時の神と、立ち向かう女神たち。 敵は、過去から襲いくる。 第二十一話 どっちが美味しいんでショー 第二十二話 コノ頃都ニ流行ルモノ・・・深み填りと這上姫ならびにデュアル・マインドより神姫の二つ名をお借りしました。 第二十三話 しょうゆ・あ・スマイル 第二十四話 俺がメリーで私がアキラさんで・・・15cm程度の死闘よりキャラクターおよび地名をお借りしました。 第二十五話 俺がメリーで私がアキラさんで 中編 ~女神様の憂鬱~ こちらの作品より、設定やキャラクターの一部をお借りしております。 ウサギのナミダ及びキズナのキセキ HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 深み填りと這上姫 15cm程度の死闘 デュアル・マインド 今まで桐皮町に来て下さった作者様の作品へのリンクです。接客担当のメリーともども、感謝、感激、雨あられなのです。 Forbidden Fruit すとれい・しーぷ 15cm程度の死闘 深み填りと這上姫 第十三話をアップしました。うん、新展開というかライバル登場回という扱いが正しいかもしれませんね。(汗 お楽しみ頂けるといいのですが…… -- ばるかん (2011-08-10 23 06 14) にゅう様 今回(十三話)はクレアが大変な…・と、ここから先は読まれてからのお楽しみということでm(_ _)m -- ばるかん (2011-08-10 23 08 40) ひつじ様 ありがとうございます。すとれい・しーぷの方もこれからどうなっていくのか楽しみです。応援しております! -- ばるかん (2011-08-10 23 10 52) 最新話読ませていただきました。新キャラはラプティアスですか、PSPバトルマスターズでの相棒なので感慨深いです。今回確かにクレアが大変なことになっていましたね、無事立ち直れるのか。アテナの過去やメリーの過去に何があったのか、謎が明かされるのを楽しみにしています。次回は予告から見るといつもの嫉妬メリーが発動しそうでこれはこれで楽しみです(ぉぃ -- にゅう (2011-08-13 23 43 05) やっとこさ第十四話です。次回はインターバルなのかなぁ(え -- ばるかん (2011-08-26 22 38 20) にゅう様 アテナの過去もおいおい明かしていこうと思います。長編とかになるかもしれませんね……。 -- ばるかん (2011-08-26 22 43 32) 第十四話、楽しく拝読致しました。ところですみません、三ヶ月ほど前に食堂へのお誘いを頂いたのですが、竹櫛鉄子とコタマの二人をお伺いさせてもよろしいでしょうか。時系列的に古くなり、さらにコタマが暴言を吐きそうで申し訳ないのですけど、ぜひテレビで紹介されたカツカレーを食べに行きたく、よろしくお願いします。 -- にゃー (2011-08-27 16 23 48) にゃー様 もちろんウェルカムですよ!ご来店楽しみにお待ちしております。 -- ばるかん (2011-08-27 22 38 30) 夏祭りのお話だというのに、アップが九月になってしまいましたorz 次回以降もちょっとだけ夏のエピソードが続きますよ~ -- ばるかん (2011-09-12 22 15 06) いつもながら明石食堂の日常を楽しく読ませていただいております。個人ならありそうな風呂上がりのアレの好みの話ですが町内規模にするとは新しいですね。ちなみに私はコーヒー牛乳派ですw -- にゅう (2011-09-14 12 47 46) 十六話、再び事件発生です!長くなりそう……。 -- ばるかん (2011-09-17 22 28 25) にゅう様> 私もコーヒー好きですw 飲むヨーグルトもけっこういけますよ! -- ばるかん (2011-09-17 22 30 29) 最新話読みました。久方ぶりのシリアスの長めな話になりそうですね。ボケ突っ込み役とばかり思っていた友人にあんな背景があるとは思いませんでした。健吾くんもこれから精神的に成長しそうで続きが待ち遠しいです。 -- にゅう (2011-09-18 12 54 20) にゅう様> この後は結構ストレート(?)になると思いますよ(汗 できるだけ早く書き上げますので……。 -- ばるかん (2011-09-30 23 08 17) 最新話、こうなると多くは言えませんね。頑張れ、男の子。 -- にゅう (2011-10-01 01 48 50) 更新に一ヶ月……しかも予告したものと違うタイトルに……(トホホ ですが、予定していた内容に変更は無いので、お楽しみ頂ければと思います……。 -- ばるかん (2011-10-30 22 57 34) にゅう様> なんとか男を見せられてるストーリーになっていれば……と思います。良ければお読み下さい……。 -- ばるかん (2011-10-30 22 59 51) 最新話読みました。やっぱりこういう展開は熱くていいですね!多くのカッコいい大人の姿を見てきた少年はカッコ悪い大人を精神的に圧していくのはスッキリします。そして出るべき場面は落とさない主人公、ここからの逆転、期待しています! -- にゅう (2011-10-31 00 40 21) 迷ったあげくに十九話を二分割しました。遅くなってしまって本当に申し訳ないデス…… -- ばるかん (2011-12-23 22 49 45) にゅう様 >ここから逆転でございますヨ! -- ばるかん (2011-12-23 22 50 45) 第十九話、待ってました! 健吾君のがんばりにどう決着が付くのか楽しみで、待ち焦がれておりました。二話分割の大ボリュームに、オールキャスト登場の大盤振る舞い、そして健吾君とクレアの活躍にワクワクしながら読み切りました。女の子のために戦う女の子はかっこいい! そのマスターのために戦う神姫もやっぱりかっこいいですね。それにしても和葉ちゃんは天使すなあw 次回はアテナの過去も語られるとのことで、ますます楽しみです。 -- トミすけ (2011-12-24 21 00 04) ワルモノに正義の鉄槌を下す瞬間ほど、スカッとする場面はありませんね! 某レイガン使いをも唸らせる右ストレートに敬意を表して、ニボシヂェ・・・ニトロヂェリーで乾杯! -- にゃー (2011-12-25 21 52 12) 最新話、読ませていただきました。熱い展開の後の最後の健吾くんへの「お礼」……思わずニヤケてしまいました。……アッシュさんに会いたいと我が社の約一名が熱望していますが、黙殺しておきますね -- 五色リンゴ (2011-12-26 12 49 04) 新年あけましたということで、古いお話のちょっとした変更を行いました。主に三点リーダから六点リーダへの変更です。 今年も食堂の面々ともどもよろしくお願いいたします -- ばるかん (2012-01-04 22 41 48) トミすけ様 >ありがとうございま……って、女の子のために戦う『女の子』……だと……(間違ってはいないです) 楽しんでいただけたようでなによりです。 アテナの過去はもう少しお待ち下さい…… -- ばるかん (2012-01-04 22 46 56) にゃー様 >ンフ、ヂェリーもいいけどそちらさんの面白そうなアプリも試したいわね。アテナちゃんが『にゃによこれ!?』とか言ったら面白いと思わない!? -- ばるかん&玲子さん (2012-01-04 22 49 42) 五色リンゴ様 >ふむふむ、どなたですかな? わたくしとしても是非お会いしたい。ミリタリータイプの神姫の方が多いようですから、武器やマスターの愚痴についてじっくり語り合いたいですなぁ -- ばるかん&アッシュ (2012-01-04 22 52 21) これは失礼しました。「女の子のために戦う男の子」ですよね(^^; 申し訳ございませんでした。次章の更新を楽しみに待っています。 -- トミすけ (2012-01-05 23 27 57) トミすけ様> いえ、謝って頂かなくても、むしろそう書いたのが私なので(笑) 次回はなるべく早く上げたいと思います -- ばるかん (2012-01-05 23 43 59) 最新話読みました。商店街勢大暴れで長かった戦いもようやく決着がつきましたね。最初の頃に比べて健五君もクレアも精神的に成長していますね、最後にオチはついてましたがw 次回はアテナの過去の話でしょうか。クレアもどんな形で戻ってくるのかも楽しみです。 -- にゅう (2012-01-20 01 38 36) 二十話をアップしました。今回をもって一応の一区切りとしたいと思います。次回からは第二部とな……ればいいなぁ(汗) -- ばるかん (2012-03-03 22 47 38) にゅう様> あのオチはどうしてもつけたかったんです!( -- ばるかん (2012-03-03 22 48 48) ↑途中で送信してしまいました…… つけたかったんです!(笑) クレアはまあ、予想されていた方もいらっしゃるかなという感じになりました。 -- ばるかん (2012-03-03 22 50 38) 最初の方で読むのを中断していたのを思い出し、一気に読みました。……ここまで血沸き肉躍ったのは久しぶりです。第一話から最新話まで興奮しっぱなしでした。第二部を楽しみにしています。 -- 第七スレの6 (2012-03-08 21 01 45) アイデアをひねり出しながら最近放送中のアニメを視聴 「そうかー、這い寄る白子の頭に犬子がフォークを突き刺して、その犬子にジャス子さんがムスコ(ムスメ?)ニウム補給のため抱きつくのかー」なんてろくでもないことを考えていたら更新履歴にでかでかと間違った記載を何か月もしていたことに気づいて悶絶 そんなこんなで第二部です。 -- ばるかん (2012-05-25 00 43 49) >第七スレの6様 血沸き肉躍るとまで言っていただいて感激です。第二部は今以上に更新ペースを上げて頑張りたいと思います。 -- ばるかん (2012-05-25 00 46 26) (番外その三で)ハナコ登場とお伺いして、少し顔を出すくらいかなーと思っていました。ですので、団体様でお越し頂いて、こちらのメンバーも多数出して頂いて、しかも貧乳革命でしっちゃかめっちゃかに・・・始終ハラハラニヤニヤしながら拝読しました。いろいろと感想はあるのですが、ハナコ達の雰囲気や細かな描写などをそのまま再現頂いたことの嬉しさが一番です。本っ当にありがとうございました。あと、是非またお越し下さい。我が町内はいつでも混沌を受け入れますよフフフ・・・大きいは正義! -- にゃー (2012-05-29 01 38 33) チャリで来ました。今回のコラボ作品はコラボ先(にゃー様)の雰囲気を崩していない、とても良い作品だと思います。ハナコ、タマちゃん無双になるかと思いきや、先に組織が呆気なく崩れ去るというw思い切り笑わせていただきました。また読んでみたいです!…何事も両手に収まるくらいの大きさがちょうどいいんですよ…(ドヤァ) -- 白田黒乃 (2012-06-01 17 17 46) おぉ!外伝と繋がりましたか! どうにも気になっていたのがすっきりしました! 反魂香…サトミタダシ…(ボソッ -- 名無し (2012-08-27 02 34 36) いよいよアニメ武装神姫が開始しますね。なんとかその前に最新話をアップできました。そして、ずっとお返しできていなかったコメントの方にお答えしたいと思います。 >にゃー様 ふ、ふんだ!貧乳の良さを分からせるまで、私たちはなんどでも、な・ん・ど・で・も -- ばるかん (2012-10-04 00 08 51) 途中送信・・・ な・ん・ど・で・もよみがえりますよ! メリー -- ばるかん (2012-10-04 00 10 01) >白田黒野様 読んでくださりありがとうございます。ふ、ふん!貧乳だって両手に収まるじゃないですか!(負け惜しみ) -- ばるかん (2012-10-04 00 13 04) >名無し様 ぼくらの~まちのおくすりや♪さ♪ん~♪……私は1・2よりも4が好きですかね。それはさておき、ハンゴンコウというプログラムは、今後のストーリーに大きく関わってきます。どんな関わり方をするのか、楽しみに待っていてくださいませ。 -- ばるかん (2012-10-04 00 24 32) 最後のは…まさか、井川の…? -- 通りすがりの武装紳士 (2012-10-04 22 24 04) ぎゃーっ!気がついたら半年たってました!ち、違うんデスよ、別に夏コミだとか艦〇れだとかにうつつを抜かしてたわけじゃないんデスよ。…はい、言い訳でした。すみません。次回更新は早めに行います。 -- ばるかん (2013-08-18 00 56 26) 遅ればせながらコメ返しを… 通りすがりの武装紳士様 …やはりというべきか、お気づきになられましたね。「彼女」には、今後のエピソードで重要な役を演じてもらうつもりです。 -- ばるかん (2013-08-18 00 58 33) コミケ参加おめでとうございます! 私もサークル参加しますので、ご挨拶できると嬉しいです。……確認したら、どうもお隣同士みたいですよ? -- トミすけ (2014-08-11 12 21 35) >トミすけ様 調べてみたらホントにお隣でしたね(笑) 会場でお会いしましたら、ぜひその時はご挨拶させていただきます -- ばるかん (2014-08-12 23 38 39) おかえりなさい。ずっと待ってました…♫これからも執筆頑張って下さい、応援しています! -- absa (2014-08-13 09 08 40) 名前 コメント ―――― 武装食堂 コメントログ
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出会い&登校2 アンジェラスの視点 遅刻にならないように、軽く走り続ける私達。 先頭はクリナーレがランニング気分で走っている。 あの子は何でも楽しむような思考回路してるから少し羨ましい。 それに比べて私はいつも気苦労ばかりで疲れる一方。 今日だってそうです。 いきなりシャドー=アンジェラスが出てきたり、いきなり遅刻になりそうになったり…。 いやいや、こんなネガティブな気持ちじゃ高校生気分を味わえません! 何事にも前向きに考えなければいけない! 私がそう決意した時、クリナーレがちょうど十字路に差し掛かった。 その時だ。 ドンッ! 「ウワッ!?」 「……むぎゅ」 クリナーレが誰かとぶつかりました。 あーもう、前方不注意ですよ。 「これで相手がパンを口に銜えていて、尻餅をついてドライがウッカリ相手のパンツを見てしまったら、まるでラブコメみたいね♪」 シャドーが何処かの漫画にでてきそうなシチュエーションを言う。 ていうか、そのシチュエーションは古くない? それにラブコメなのかなぁ? 更に言えば百合になっちゃうよ、クリナーレは女の子だし、相手の声からして女の子だし。 …今思えばなんで武装神姫には男性がいないのでしょうか? って、そんな事を考えてる場合じゃありません! 倒れた女の子を大丈夫かな! 「大丈夫ですか!?」 私は女の子に近づき喋る。 ぶつかってしまった女の子はクリナーレと同じ悪魔型ストラーフ。 白黒のブレザーを着ていて無表情。 「……痛かった」 そう言いながら立ち上がるストラーフ。 …あれ? 何処かで会った事があるような気がする。 「大丈夫ですか? アイゼン」 「そちらの方も、お怪我はありませんか?」 他の人も居たみたい。 犬型ハウリンと砲台型フォートブラッグでした。 彼女達は青色のブレザーを着ていてストラーフに対して心配そうに接する。 それに思い出しました、アイゼンは前にバトルした事がある神姫でした。 バトルは残念ながら途中で私は気を失ってしまい、気がついたら負けていました。 「あなたは確か…アンジェラスでしたっけ?」 「あ、え~と、サラ…ですよね。こんにちは。七瀬都さんの妹の神姫ですよね?」 「一応そうです。あなたとは少ししか会っていませんが」 砲子のサラ。 前回の企画でバトル参加した神姫。 あの時のバトルでは顔しか会わせていませんでしたが、サラは私の事を覚えてくれてたみたいです。 なんだか少し嬉しいです。 「ところでサラ、アイゼンと犬型ハウリンは誰ですか?初めて会うお方だと思うのですが」 私が視線を変えながら言うとサラは察してくれたのかニッコリ笑って答えてくれた。 「紹介します。こちらのストラーフはアイゼン、あとその犬型はそのまんま犬子ですね」 サラが私達に二人を紹介していく。 こちらも紹介した方がいいのかな? 「お願いします。正直ハルナから何も知らされていないのですよ。…まったく、ハルナもハルナです。いきなり都にわたしごと強制連行されて、その挙句がこんな状況ですし…帰ったらシュールストロミングの刑ですね」 「シュールストロミングの刑…ですか…。あ、では今度はこちらから紹介していきますね」 私は軽くクリナーレから順に紹介していった。 …。 ……。 ………。 そして最後のシャドー=アンジェラスの順番になって紹介に困った。 彼女あまりにも危険な存在。 どー皆に説明したらよいのでしょうか? 「アタシ自ら紹介するよ♪コッホン…どーもこんにちは♪♪アタシはもう一人のアンジェラス、シャドー=アンジェラスでーす♪アンジェラスという名前が二人いるからシャドーって呼んで」 バシン! 突如と響く拳を受け止める音。 シャドーの自己紹介中にアイゼンが左ストレートパンチをはなったのだ。 それを軽やかに受け止めるシャドー。 アイゼンの無表情が少しだけ変化し怒ってるように見える。 「お久しぶり~、アイゼンちゃん♪会えて嬉しいわ♪♪」 「……来るんじゃなかった」 場の空気が…険悪なムードなっていく。 このままでは駄目です。 折角の上機嫌のシャドーが不機嫌にでもなったらヤバイ。 この場に居る全員を惨殺しかねないですし、ここは私が張り込んで! 「あ~ん♪本当に可愛い♪♪抱きついちゃお♪♪♪」 「……むぎゅっ!?」 素早くアイゼンの後ろに回り込み抱き着くシャドー。 あ、あれ? 不機嫌にならない? というか…アイゼンに抱き着き、いい子いい子しながら頭を撫でています。 アイゼンも怒っていた表情から無表情になっています。 困った顔はしないのですね。 「アイゼン可愛いよアイゼン」 「……邪魔、……すごく邪魔……」 何処かで聞いた事があるセリフを言うシャドー。 とりあえず、ジャレついてるのなら大丈夫そうですね。 …アイゼンにはかなりお気の毒ですけど。 ごめんないさい、アイゼン。 「う~ん…」 「な、なんでしょうか?」 クリナーレが腕組しながら犬子さんを凝視する。 それに対して犬子さんはなにやら困り顔。 「ボクさぁ、前から思ってる事があるんだけどー」 「はい?」 「犬型と猫型はどうして尻尾を随時装備していないのかなぁ~と思うだよね」 そう言いながらクリナーレは犬子さんのスカートを捲くりあげる。 ちょっ、なにやっちゃってくれてるのよクリナーレ! 「ハワワワワッ!?」 いきなりスカートを捲り上げられた事によって犬子さんが驚愕する。 そりゃそうですよ。 誰だってあんな恥ずかしい事をされたらビックリしますよ。 ていうか止めなさい! 私がクリナーレを止めようとした瞬間。 「姉さんの馬鹿!」 「タワバッ!?」 クリナーレの妹、パルカが右踵落しをかました。 命中と同時にメリッという鈍い音が聞こえ、脳天を直撃した事によって地面に倒れ悶絶するクリナーレ。 それからパルカは踵落しをした後、捲くられたスカートを丁寧に戻し犬子さんに頭を下げる。 …たまに思うのだけれど、ときどきパルカの事が怖くなる。 いつもは怯えてるというか、ビクビクしてるけど非常時になる行動が大胆になりますね。 特に姉のクリナーレに対する行動が。 「パルカはあぁ見えてもヘタレのくせに度胸がありますから」 「…それ、矛盾してない?」 「それとお姉様、言いづらい事が一件あるのですが…」 「うん?何??」 「学校…遅刻しますわよ」 「…アアアアァァァァーーーー!?!?」 私が叫んだ事によって、皆が私を注目する。 私はすっかり忘れてた事をルーナに言われて思い出したのだ。 学校のことを…。 慌てて腕時計を見ると時刻は八時半過ぎになっていた。 「ヤバイ!みんな、談笑してる暇はないよ!!全速力で学校まで走りますよ!!!」 「因みに学校の方角はあっちよ♪」 私とシャドーが皆さんに伝えると一目散に学校へと走る。 「アイゼン、どっちが学校に先に着くかボクと勝負しろ!」 「……ん」 「ウッシャー!負けないぞ!!」 「……!!」 アイゼンとクリナーレは学校まで競走するみたい。 まったく、少しは遅刻の心配してよね。 「制服で走ると汗が出るからイヤですね」 「別に私は気にしませんけどね。…あぁ。そういえばハルナが気にしてましたっけ。夏場は胸が蒸れるとか」 ルーナとサラは仲良く喋りながら走る。 にしてもちょっと内容が生々しいよ。 汗とかさぁ…もっと女の子らしい会話をしてください。 「パルカさん、よろしくお願いいたします」 「あ、はい、パルカです!よろしくお願いします!!先程は姉さんが失礼な事をしてしまい申し訳ありません」 「いえいえ、気にしないでください。少し驚いたぐらいですから」 パルカと犬子さん達は普通に挨拶しながら走ってるから大丈夫でしょう。 うん、これが普通。 普通の会話だよね。 ルーナがおかしいのよ。 いきなり汗の話しをするなんておかしい。 サラに迷惑だと思わないのかな? 「迷惑だと思ってないんじゃないの♪」 空中を飛びながら私に言うシャドー。 本来なら筺体のプログラムによって飛べないはずなのですけれど、シャドーがプログラムを書き換えた事によって飛行を可能した、こんな所かな。 大方、シャドーの周辺だけ重力数値を変えて飛べるようにしたんでしょう。 ていうか、勝手に人の思考を読まないでよね! いくら同じ存在だからって、これではプライバシーもへったくれもない。 少しは自重しろって言いたい。 「飛んでるとパンツが見えるよ」 「見せたって減るもんじゃないしぃ♪アタシ達は素体なんだからパンツなんかはいてないじゃん、今はスカートをはいてるけど♪♪」 「羞恥心というものが無いの?」 「一応あるけど別にいいじゃん♪女の子達しかいないんだから♪♪」 「あーもう!私と同じ身体なんだから、私が恥ずかしいの!!ご主人様や他のオーナー達からも見られているのよ!!!」 「イィーじゃ♪マスターは見れて嬉しいし、他のオーナー達もアタシの魅力にメロメロ♪♪パンチラでポイントゲットよ♪♪♪」 「何がポイントゲットよ!ポイントなんか無いし!!と、とにかく降りなさい!!!でないと、無理矢理に私もネット能力を使って貴女を落としますよ!!!!」 「お~怖い怖い♪そういえば『私』は『アタシ』だもんね♪♪同じ能力が使えるの道理。分かったよ、降りるわ♪♪♪」 私が注意してるにも関わらずニコニコしてるシャドー。 本当はネット能力をシャドー並には使用出来ませんが、重力数値ぐらいのプログラムなら書き換え変える事ができます。 もしシャドーが降りて来なかったら即座に重力数値を書き換えて、地上に叩き落としてましたよ。 ズカーン、とね。 「酷い扱い。同じアインなのにね♪」 「だ・か・ら!私の思考を読まないで!!」 私は怒りながら地上に下りたシャドーの右手を掴み引っ張りながら走る。 シャドーと喋りながら走ってしまったせいで、他の皆より出遅れてしまい随分と差がひらいてしまっています。 …あぁ~あ、無事に遅刻せず学校にたどり着く事ができるのかな。 こんなにも先行き不安だらけで学校に向かう私は何処の世界を探しても…私だけじゃないのだろうか。 …。 ……。 ………。 一方、その一部始終を見ていたオーナー達は。 「「「「…………」」」」 沈黙を守っていた。 特に話す事も無く、ただ自分達の武装神姫が学生生活を見守るだけ。 けど一つだけ四人のオーナー達は一致した思いがあった。 それは…。 「「「「気・マ・ズ・イ・!(心の叫び的な感じに)」」」」 ただそれだけである。 「(c) 2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しています。」